フリーランスが保険で節税を考えるべき理由
フリーランスや個人事業主は、会社員とは異なり自分で税金対策を行う必要があります。売上が増えればその分、所得税や住民税、さらには国民健康保険料や国民年金保険料の負担が重くのしかかります。
そこで注目したいのが「保険を活用した節税」です。単なる保障を得るだけでなく、将来の資金準備やリスクヘッジをしながら、税負担を軽減できる可能性があるのです。
節税対策を怠るリスク
フリーランスは収入が不安定なため、節税を意識せずにいると「儲かった年ほど税金が跳ね上がる」状況に陥ります。特に以下のリスクが挙げられます。
- 高額な税額によりキャッシュフローが悪化
- 将来の社会保障や老後資金への不安が大きくなる
- 突発的な病気や事故で働けなくなった際に備えが不十分
こうしたリスクを軽減する手段として、保険商品は節税効果と安心を同時に得られる点で有効です。
保険を活用した節税の基本的な考え方
節税を目的に保険を利用する場合は、次のポイントを理解しておく必要があります。
- 掛金が経費や所得控除として扱えるかどうか
- 将来的に返戻金や給付金を受け取る際の課税関係
- 保障と貯蓄のバランス
この仕組みを理解しておくことで、無駄なく効果的に保険を利用できます。
フリーランスが実践できる保険節税テクニック10選
ここからは具体的に、フリーランスが実際に利用できる保険を用いた節税方法を10個紹介します。単なる制度の紹介だけでなく、「なぜ節税につながるのか」「どんな人に向いているか」も解説していきます。
1. 小規模企業共済を利用して退職金と節税を両立
小規模企業共済は、フリーランスや小規模事業者が加入できる国の制度で、毎月の掛金を「全額所得控除」として申告できます。
つまり、掛けた金額がそのまま課税所得を減らす効果を持つのです。
メリット
- 掛金は月1,000円〜7万円の範囲で自由に設定可能
- 全額所得控除のため、所得税・住民税がダイレクトに軽減
- 将来的には退職金や廃業時の資金として受け取れる
注意点
- 途中解約すると元本割れのリスクがある
- 長期的な加入を前提とする必要あり
向いている人
長期的に事業を続ける予定があり、将来の老後資金を確実に準備したいフリーランス。
2. iDeCoを活用して老後資金と税金対策
個人型確定拠出年金(iDeCo)は、掛金が「全額所得控除」となる制度です。小規模企業共済と同様に、節税効果が高い仕組みであり、さらに運用益も非課税となります。
メリット
- 掛金は全額所得控除
- 運用益も非課税
- 受け取り時には退職所得控除や公的年金控除の対象
注意点
- 原則60歳まで引き出せない
- 掛金の上限は職業区分によって決まる(フリーランスは月68,000円まで)
向いている人
将来の老後資金を積極的に形成しつつ、毎年の税金を減らしたい人。
3. 生命保険料控除を利用する
民間の生命保険に加入すると「生命保険料控除」を受けられます。控除額は支払った保険料に応じて計算され、所得控除として税金を減らすことが可能です。
メリット
- 定期保険や終身保険、養老保険など幅広い商品が対象
- 「一般」「介護医療」「個人年金」の3区分で最大控除額が設定されている
控除額の目安(所得税の場合)
- 一般生命保険料控除:最大4万円
- 介護医療保険料控除:最大4万円
- 個人年金保険料控除:最大4万円
合計で最大12万円の所得控除が可能です。
4. 損害保険料控除で地震保険に加入
火災保険や自動車保険は対象外ですが、地震保険に加入すると「地震保険料控除」を受けられます。自然災害リスクに備えながら節税できるのは大きな魅力です。
メリット
- 最大で5万円(所得税)、2.5万円(住民税)の控除が可能
- 災害リスクの高い地域に住むフリーランスに適している
注意点
- 地震保険料以外の損害保険料は控除対象外
5. 所得補償保険を経費計上してリスクを軽減
フリーランスにとって最大のリスクは「働けなくなること」です。病気やケガで収入が途絶えた場合に備えるのが 所得補償保険 です。
節税ポイント
- 支払う保険料は「必要経費」として計上できる場合がある
- 経費にできれば、その分所得を圧縮でき、税負担を減らせる
メリット
- 万一の就業不能リスクに備えられる
- 保険料を経費に計上できることで節税につながる
注意点
- 保険会社の商品設計によって経費算入できるかどうかが異なる
- 税務処理は税理士に確認するのが望ましい
6. 医療保険でリスク分散と控除を両立
フリーランスは公的保障が少ないため、医療保険による備えが重要です。加えて、介護医療保険料控除 により節税も可能です。
控除の仕組み
- 年間の保険料に応じて、所得税で最大4万円、住民税で最大2.8万円の控除が適用
メリット
- 入院・手術のリスクに備えながら節税
- 医療費が高額になった際にも安心感を持てる
向いている人
独身や扶養家族が少ないフリーランス。突然の医療費負担に備えたい人。
7. がん保険や特定疾病保険でさらに安心
医療保険に加えて、がん保険や三大疾病保険に加入すると、介護医療保険料控除 の対象となり節税につながります。
メリット
- がんや生活習慣病リスクへの備え
- 保険料が控除対象になる
注意点
- 保険料は全額控除できるわけではなく、上限がある
- 掛け捨て型の場合、純粋な節税効果は限定的
8. 逓増定期保険を使った将来資金準備
フリーランスの中でも事業規模が大きく、将来的に法人化を視野に入れている人に有効なのが 逓増定期保険 です。
特徴
- 契約初期は保険料に対する解約返戻金が少ない
- 契約年数が進むにつれ返戻率が高くなる
節税効果
- 支払う保険料の一部を必要経費に算入できる場合がある
- 将来の解約時には資金を受け取れる(ただし課税あり)
注意点
- 2025年現在、法人契約では損金算入ルールが厳格化されている
- 個人事業主の段階で加入する場合は、節税というよりも将来の資金戦略が中心
9. 長期平準定期保険の特徴と節税効果
長期平準定期保険は、被保険者の死亡保障を長期にわたって確保する保険です。フリーランスが経営者として将来的に法人化する際にも活用されます。
節税の観点
- 法人契約であれば保険料を一部損金算入できる仕組みがあったが、税制改正で制限されている
- 個人加入の場合は、保障確保が中心で大きな節税効果は少ない
活用イメージ
- 将来的に法人化予定があり、長期的な保険戦略を考えたい人
- 家族への保障を確保しつつ事業資金準備を意識したい人
10. 法人化を見据えた保険戦略
フリーランスのままでも保険を活用した節税は可能ですが、法人化するとさらに選択肢が広がります。
法人化後の保険活用例
- 役員退職金準備としての法人保険
- 福利厚生目的での医療保険・がん保険加入
- 保険料の損金算入による法人税対策
ポイント
- 法人化後は保険契約形態により経費処理が可能になる
- 個人時代に加入していた保険を法人契約に切り替えることで戦略的に使える
保険を活用した節税テクニックまとめ表
| 節税方法 | 節税効果 | 向いている人 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 小規模企業共済 | 掛金全額所得控除 | 長期で事業継続する人 | 途中解約は損 |
| iDeCo | 掛金全額所得控除+運用益非課税 | 老後資金を積立したい人 | 60歳まで引き出せない |
| 生命保険料控除 | 最大12万円の控除 | 基本的な保障を確保したい人 | 控除額に上限あり |
| 地震保険料控除 | 最大5万円の控除 | 災害リスクが高い地域 | 他の損保は対象外 |
| 所得補償保険 | 経費計上可能 | 働けなくなるリスクに備えたい人 | 商品によって経費算入可否あり |
| 医療保険 | 所得控除+医療保障 | 医療リスクを重視する人 | 控除額に上限あり |
| がん保険 | 所得控除+疾病リスク備え | がんや三大疾病対策 | 節税効果は限定的 |
| 逓増定期保険 | 将来資金準備+一部経費算入 | 法人化を考えている人 | 解約時課税あり |
| 長期平準定期保険 | 一部節税+保障確保 | 法人化予定の人 | 税制改正で制限あり |
| 法人化後の保険 | 法人税対策+退職金準備 | 事業成長を見込む人 | 契約形態による制約あり |
保険を活用した節税が有効な理由
税負担を平準化できる
フリーランスは収入が年によって変動しやすく、好調な年ほど税金が増え、資金繰りが悪化するリスクがあります。
保険を利用すると、掛金を経費や所得控除として計上できるため、所得をコントロールして税負担を平準化できます。
老後やリスクへの備えと一石二鳥
単なる節税対策として支出を増やすよりも、将来に備わる保険商品を使う方が合理的です。
たとえば小規模企業共済やiDeCoは老後資金、医療保険や所得補償保険は万一の備えとして役立ちます。
強制的な資産形成ができる
フリーランスは収入に波があり、つい余剰資金を使ってしまいがちです。
保険は掛金の支払いが定期的に発生するため、強制的に資産を積み立てる仕組みとしても機能します。
他の節税手段との比較
保険による節税だけでなく、フリーランスが実践できる他の節税方法と比較してみましょう。
青色申告特別控除との違い
- 青色申告特別控除:最大65万円の控除
- 保険控除:支払った保険料に応じて控除
比較
- 青色申告は帳簿管理の手間があるが、ほぼ確実に控除を得られる
- 保険は支払いが必要だが、保障とセットで節税が可能
経費計上との違い
- 経費計上:事業に必要な支出(通信費、交通費、消耗品など)を所得から控除
- 保険料控除:制度で認められた保険料のみが対象
比較
- 経費は日常的な支出を調整できる
- 保険は中長期的な節税とリスク備えが可能
NISAとの違い
- NISA:運用益が非課税になる投資制度
- iDeCoや共済:掛金が全額控除対象
比較
- NISAは「増やす力」に優れるが、掛金控除はない
- iDeCoや共済は「節税+将来資金形成」に直結する
保険を使った節税の失敗例と注意点
1. 節税目的だけで加入してしまう
「とにかく節税になるから」と保険に加入すると、必要以上の保障や掛金負担が発生し、キャッシュフローを圧迫します。
回避策
- 必要な保障内容を見極めたうえで加入
- 毎年の所得と支出バランスを確認する
2. 解約返戻金の課税を見落とす
貯蓄型保険を解約して返戻金を受け取ると、雑所得や一時所得として課税されます。
「加入時は節税できたが、解約時に課税が発生して結局メリットが少ない」というケースも。
回避策
- 長期的な加入を前提にする
- 解約のタイミングを税理士に相談する
3. 短期的に資金繰りが悪化する
掛金を増やして節税を狙っても、現金が手元から出ていく点は変わりません。特に売上が落ち込んだ年には負担が重く感じられます。
回避策
- 無理のない掛金設定を行う
- 節税効果だけでなくキャッシュフローを考慮する
4. 税制改正による影響
保険を利用した節税は、過去に何度も税制改正で制限が加えられてきました。今後も制度が変わる可能性があるため、長期契約ほどリスクがあります。
回避策
- 最新の税制に注意する
- 税理士やFPに定期的に相談する
フリーランスが保険を使った節税を実践するステップ
ステップ1:現状の収入と支出を把握する
まずは自分の事業収入、生活費、必要経費を正確に把握しましょう。
これにより「どれくらい節税余地があるのか」「掛金をどの程度払えるのか」が明確になります。
ステップ2:必要な保障を洗い出す
- 働けなくなったときに収入を補う保険
- 医療リスクに備える保険
- 老後資金を準備する制度(共済・iDeCo)
このように、節税目的ではなく「リスクに備える」という視点で優先度を決めることが大切です。
ステップ3:節税効果をシミュレーションする
税金の軽減効果を具体的に数値化すると、どの保険が有効か見えやすくなります。
例:年間所得600万円のフリーランスが小規模企業共済に月3万円加入する場合
- 年間掛金:36万円
- 所得控除額:36万円
- 所得税・住民税(30%の税率と仮定)で約10.8万円の節税効果
このように「掛金=節税効果」を試算することで判断がしやすくなります。
ステップ4:商品を比較・選定する
同じカテゴリの保険でも、保険会社によって返戻率・掛金条件が異なります。比較サイトやFP相談を利用して、自分に合った商品を選びましょう。
ステップ5:定期的に見直す
事業規模やライフスタイルの変化に合わせて、保険の見直しを行うことが重要です。過剰な掛金を防ぎ、節税と保障のバランスを保てます。
初めて保険節税に取り組む人の優先順位
フリーランスが「これから保険を使った節税を始めたい」と考える場合、取り組む順序を整理してみましょう。
- 小規模企業共済
全額控除+将来の退職金として安心度が高い - iDeCo
掛金全額控除+運用益非課税で資産形成に有利 - 医療保険・所得補償保険
保障と節税を兼ね備えた実務的な選択肢 - 生命保険料控除・地震保険料控除
上限があるため効果は小さいが、基本的な節税として確保 - 法人化を視野に入れた保険
事業規模が拡大し、法人化を検討する段階で導入
まとめ:保険は節税と安心を同時に実現する武器
フリーランスにとって、税金対策は避けて通れない課題です。
保険を上手に活用すれば、
- 税負担を軽減できる
- 老後資金やリスクへの備えができる
- 強制的な資産形成が可能になる
という3つのメリットを享受できます。
ただし「節税のために加入する」のではなく、必要な保障を確保したうえで、結果として節税につながる という視点を忘れないことが大切です。

