節税のための退職金制度活用ガイド|中小企業・経営者必見の仕組みと選び方

節税のための退職金制度活用ガイドをイメージしたアイキャッチ画像。スーツ姿の男性、財布、チェックリスト、硬貨のイラスト入り。
目次

退職金制度は「節税」と「福利厚生」の両立策

中小企業や個人事業主にとって、退職金制度は従業員の将来を守る福利厚生であると同時に、経営者にとっても大きな節税効果をもたらす制度です。
給与として支払う場合と比べて、退職金は税制上優遇されており、同じ金額を渡しても従業員側の税負担が軽くなるメリットがあります。さらに、会社側にとっても損金(経費)として処理できるため、法人税の軽減につながります。

つまり、退職金制度は「人材の安定確保」「節税対策」「事業承継の準備」という三つの役割を同時に果たせる重要な制度なのです。


経営者が抱える退職金制度の悩み

退職金制度の導入や活用を検討する際、経営者は次のような悩みを持つことが少なくありません。

  • 退職金を準備する資金が足りない
  • どの退職金制度を選べば良いのか分からない
  • 従業員のためだけでなく、自分自身の退職金も考慮すべきか迷う
  • 生命保険や共済を活用した退職金準備の仕組みが複雑で理解しづらい
  • 税制上のメリットを最大化する方法が分からない

特に中小企業の場合、制度設計を誤ると「思ったほど節税できない」「資金繰りが苦しくなる」といった問題が起きやすいのです。


誤った理解がもたらすリスク

退職金制度を導入したものの、適切に運用できなかった企業の中には、以下のような失敗事例もあります。

  • 積立不足で退職時にまとまった資金が用意できず、急な借入を余儀なくされた
  • 制度を形だけ導入したが、税制優遇を十分に活かせなかった
  • 経営者の退職金を準備せず、事業承継時に資金計画が破綻した
  • 税務調査で「給与として扱われるべき支出」と指摘され、追徴課税を受けた

このように、退職金制度は正しく理解しないと節税どころか経営リスクを高める可能性があるのです。


節税のための退職金活用の方向性

結論として、退職金制度をうまく活用するためには、

  1. 制度の仕組みと税制優遇を正しく理解すること
  2. 会社規模や資金繰りに合った制度を選ぶこと
  3. 長期的な視点で退職金準備を計画すること

が不可欠です。

退職金制度が節税につながる仕組み

退職金が節税に有効とされる理由は、会社と従業員(または経営者本人)双方に税制上のメリットがあるからです。

  • 会社側のメリット
    退職金として支給した金額は損金(経費)に算入でき、法人税や所得税の課税所得を減らすことができる。
  • 従業員側のメリット
    退職金は給与所得よりも大幅に優遇された「退職所得控除」や「1/2課税」が適用されるため、税金負担が軽くなる。

つまり、同じ金額を「給与」として払うか「退職金」として払うかで、手元に残る額が大きく変わるのです。


会社にとっての退職金の損金算入効果

購入時の給与と退職金の違い

例えば、経営者が役員に対して500万円を支払う場合を考えます。

  • 給与として支払った場合:
    損金に算入されるが、従業員側の所得税率は給与課税のため高くなる。
  • 退職金として支払った場合:
    損金に算入されるだけでなく、従業員側は退職所得控除や1/2課税で税負担が大幅に軽減される。

👉 会社にとっては同じ「損金」でも、従業員にとっての手取りが増える点が大きな違いです。


退職所得控除の仕組み

退職金には「退職所得控除」という大きな非課税枠が用意されています。

退職所得控除額の計算式

  • 勤続20年以下の場合:40万円 × 勤続年数(最低80万円)
  • 勤続20年超の場合:800万円 + 70万円 ×(勤続年数-20年)

例:勤続30年の場合
800万円 + 70万円 × 10年 = 1,500万円 が非課税枠

👉 この控除額以内であれば、退職金に対して一切課税されません。


1/2課税の仕組み

退職金から退職所得控除を差し引いた残りの金額については、さらに「1/2課税」が適用されます。

計算例

  • 退職金:2,000万円
  • 勤続30年の退職所得控除:1,500万円
  • 課税対象:500万円
  • 1/2課税:500万円 ÷ 2 = 250万円が課税対象所得

👉 通常の給与課税と比べて、非常に低い課税所得で済むことが分かります。


退職金支給の合理性が求められる

ただし、会社が退職金を損金算入するためには「合理的な支給」であることが条件です。

  • 就業規則や退職金規程に基づいているか
  • 勤続年数や役職に応じた金額になっているか
  • 社会通念上、過大な額になっていないか

👉 税務署から「不当に高額」と判断されると、経費として認められず「役員賞与」扱いになり、損金不算入になるリスクがあります。


退職金が節税に有効な理由まとめ

  1. 会社側:支給額を損金算入できる
  2. 従業員側:退職所得控除+1/2課税で税負担が大幅軽減
  3. 双方にメリット:給与よりも効率的にお金を渡せる

退職金を準備するための代表的な制度

退職金制度を導入・活用する方法はいくつかあります。ここでは、中小企業や個人事業主が利用しやすい代表的な仕組みを紹介します。


中小企業退職金共済(中退共)

特徴

  • 独立行政法人が運営する公的な退職金制度
  • 掛金は月5,000円〜30,000円まで自由に設定可能
  • 全額が損金算入できるため、法人税の節税効果がある
  • 退職金は中退共本部から直接従業員に支払われる

メリット

  • 導入が簡単で手続きがシンプル
  • 掛金が経費になるため即効性のある節税効果
  • 中小企業でも安心して退職金制度を整備できる

デメリット

  • 一度加入すると途中解約が難しい
  • 掛金額の上限があり、高額な退職金準備には不向き

確定拠出年金(企業型DC・個人型iDeCo)

特徴

  • 会社や個人が掛金を拠出し、従業員が運用して将来の退職金とする制度
  • 掛金は全額損金算入(法人の場合)、かつ従業員の所得税も非課税
  • 運用益も非課税で、受取時に退職所得控除や公的年金等控除を適用可能

メリット

  • 節税効果が高く、従業員の将来の資産形成にも役立つ
  • 企業型と個人型を組み合わせることが可能
  • 運用次第で退職金額が増える可能性あり

デメリット

  • 運用成績によって将来の受取額が変動する
  • 原則60歳まで引き出せないため流動性が低い

生命保険を活用した退職金準備

特徴

  • 法人契約の生命保険を活用し、解約返戻金を退職金の原資とする方法
  • 定期保険・養老保険・長期平準定期保険などが利用される
  • 保険料の一部または全額を損金算入できる商品もある

メリット

  • 解約返戻金を退職金に充当できる
  • 万一の場合の死亡保障も兼ねられる
  • 計画的に資金を積み立てられる

デメリット

  • 税制改正の影響を受けやすい(損金算入割合が制限されることもある)
  • 解約返戻率が低い時期に解約すると損失が出る

小規模企業共済(個人事業主・経営者向け)

特徴

  • 個人事業主や中小企業経営者が、自分自身の退職金を準備するための制度
  • 掛金は月額1,000円〜7万円まで自由に設定可能
  • 全額が所得控除となり、大きな節税効果を発揮する

メリット

  • 個人事業主でも退職金を準備できる
  • 掛金全額が所得控除となり、所得税・住民税を軽減
  • 廃業・引退時に共済金を退職所得扱いで受け取れる

デメリット

  • 12か月未満で解約すると掛金が戻らない
  • 長期利用を前提とした制度で、途中解約では元本割れのリスクあり

制度別の比較表

制度対象掛金の損金算入受取時の課税特徴
中退共中小企業の従業員全額損金退職所得課税公的で安心、導入が簡単
確定拠出年金企業・個人全額損金(法人)/所得控除(個人)退職所得または年金課税運用次第で増減
法人保険法人一部損金解約返戻金を退職金原資に保険+積立の両立
小規模企業共済個人事業主・経営者所得控除退職所得課税経営者自身の退職金準備

制度選びのポイント

  • 従業員の退職金重視 → 中退共・企業型DC
  • 経営者自身の退職金 → 小規模企業共済・法人保険
  • 流動性や資産形成も考慮 → 生命保険・確定拠出年金

👉 制度を単独で使うのではなく、複数を組み合わせることでリスク分散と節税効果の最大化が可能です。

退職金制度を効果的に活用するためのステップ

ここまで退職金制度の仕組みや種類を解説してきました。では、実際に導入・活用するにはどのようなステップを踏めば良いのでしょうか。


1. 自社の状況を分析する

  • 従業員数や平均勤続年数を確認
  • 経営者自身の将来資金も含めて必要額を試算
  • 資金繰りに余裕があるかをチェック

👉 まずは「どれだけ退職金を準備すべきか」を明確にすることが第一歩です。


2. 制度を選択する

  • 従業員中心なら → 中退共や企業型確定拠出年金
  • 経営者自身も含めるなら → 小規模企業共済や法人保険
  • 短期・中期の資金対策も考慮 → 保険や積立制度を組み合わせる

👉 単一の制度に依存せず、自社に合ったバランスを取ることが重要です。


3. 規程を整備する

  • 就業規則や退職金規程を作成
  • 役員退職金については株主総会の決議を整備
  • 税務署から見ても「合理的な支給」と判断される根拠を用意

👉 文書化は節税効果を確実にするうえで欠かせません。


4. 長期的に積み立てる

  • 毎年一定額を計画的に積み立てる
  • 決算状況に応じて増額や調整を検討
  • 中途解約や積立不足が起きないよう管理

👉 長期的な視点を持ち、「急に退職金を準備する」状況を避けることが大切です。


5. 専門家に相談する

  • 顧問税理士や社会保険労務士に制度設計を確認
  • 生命保険や共済を使う場合は複数社の比較検討を行う
  • 節税効果とキャッシュフローのバランスを相談

👉 制度や税制は改正が多いため、常に最新の情報に基づいた判断が求められます。


まとめ|退職金制度は「節税」と「未来の備え」を両立できる

  • 退職金は 会社の損金算入+従業員の税負担軽減 で大きな節税効果を生む
  • 中退共・確定拠出年金・法人保険・小規模企業共済など、状況に応じた制度を選べる
  • 制度を導入することで、従業員の安心を確保し、経営者自身の老後資金も準備できる
  • 節税だけに目を奪われず、資金繰りと長期的な経営戦略を意識することが成功のカギ

👉 退職金制度は「節税テクニック」ではなく「経営戦略の一部」。正しく設計すれば、会社の未来を守る大きな武器になります。

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