助成金・補助金が節税に直結する理由を知る
事業を行う上で、資金調達は避けて通れない課題です。銀行融資や自己資金に頼る方法もありますが、実は助成金や補助金を活用することで節税にもつながることをご存じでしょうか。
助成金・補助金は返済不要の資金であり、特定の要件を満たすことで国や自治体から受け取ることができます。資金繰りを改善するだけでなく、間接的に税負担を軽減する効果があるのです。
多くの経営者が「助成金や補助金は申請が難しい」「うちの会社には関係ない」と思い込み、利用せずに終わっています。しかし、その仕組みと活用法を理解すれば、手元資金を守りながら税金対策ができる有効な手段となります。
誤解されがちな助成金・補助金の税務上の扱い
助成金や補助金は、税務上「収入」として計上されるのが原則です。そのため、受け取った額に応じて所得税や法人税が課されます。
一見すると「税金がかかるなら節税にならないのでは?」と思われがちですが、実際には資金の使い道や経費計上との組み合わせによって税額を抑えることが可能です。
例えば、助成金を使って設備を導入した場合、その設備は減価償却や中小企業経営強化税制の特例を使って即時償却できることがあります。これにより、助成金収入と同額以上の経費を計上できれば、課税所得を増やさずに資金を確保できるのです。
助成金と補助金の違いを整理
まずは基本的な違いを押さえましょう。
| 項目 | 助成金 | 補助金 |
|---|---|---|
| 財源 | 雇用保険や国の予算 | 国・自治体・民間団体の予算 |
| 公募形態 | 通年または期間限定 | 年数回の公募制 |
| 採択率 | 条件を満たせば原則受給可能 | 申請しても採択されない場合あり |
| 主な目的 | 雇用維持・人材育成 | 設備投資・研究開発・販路拡大 |
| 節税への影響 | 経費計上との併用で所得圧縮可能 | 同左 |
助成金・補助金を節税に活かす3つの基本戦略
1. 設備投資と組み合わせる
助成金や補助金を活用して購入した設備や機器は、税制優遇の対象となる場合があります。
例えば、中小企業経営強化税制を利用すれば、即時償却や特別償却によりその年の経費として一括計上でき、助成金収入の課税負担を相殺できます。
2. 人材育成や雇用関連制度を活用
雇用調整助成金やキャリアアップ助成金などは、人件費を補填しつつ、その費用は必要経費として計上可能です。結果として、課税所得の増加を防げます。
3. 事業拡大費用と連動させる
補助金で広告宣伝や新規事業立ち上げに伴う費用を賄えば、その支出は経費となり、補助金収入との差引で税負担をコントロールできます。
節税効果が得られる助成金・補助金の例
| 制度名 | 対象 | 最大受給額 | 節税ポイント |
|---|---|---|---|
| IT導入補助金 | 中小企業・小規模事業者 | 450万円 | ITツール費用を経費化、即時償却可 |
| ものづくり補助金 | 製造業・サービス業等 | 1,250万円 | 設備投資による減価償却で節税 |
| キャリアアップ助成金 | 有期→無期雇用転換など | 72万円/人 | 人件費経費化で所得圧縮 |
| 小規模事業者持続化補助金 | 小規模事業者 | 200万円 | 広告宣伝費の経費計上 |
助成金・補助金を活用した節税の実践例
事例1:IT導入補助金を利用してクラウド会計ソフトを導入
ある小規模事業者A社は、経理業務効率化のためにクラウド会計ソフトを導入。
導入費用の3分の2をIT導入補助金で賄い、自己負担はわずか。
この経費は全額損金算入でき、補助金収入による課税所得増加を経費で相殺できた結果、実質的な税負担ゼロで最新ツールを導入できました。
事例2:ものづくり補助金を活用した設備更新
製造業B社は老朽化した生産設備を更新。補助金で購入費用の一部を賄い、残りは自社負担。
中小企業経営強化税制を併用して即時償却を適用し、補助金収入額を上回る経費計上により、キャッシュフロー改善と節税を同時達成しました。
事例3:キャリアアップ助成金で雇用転換
サービス業C社は、パート従業員を正社員に転換し、キャリアアップ助成金を受給。
助成金は課税対象ですが、人件費として給与を経費計上できるため、課税所得の増加を防ぎつつ従業員の定着率向上にも成功しました。
助成金・補助金申請の流れと注意点
ステップ1:情報収集
- 中小企業庁、厚生労働省、自治体の公式サイトを確認
- 商工会議所や認定支援機関の説明会に参加
ステップ2:要件確認
- 対象業種や事業規模、実施期間などを精査
- 審査基準や採択率も把握しておく
ステップ3:計画書作成
- 補助対象経費や実施スケジュールを明確化
- 節税面も踏まえて資金活用計画を立てる
ステップ4:申請
- 期限厳守。電子申請が主流
- 不備があると採択率が下がるため、専門家チェック推奨
ステップ5:事業実施・報告
- 補助事業終了後に実績報告書提出
- 領収書や契約書など証憑の保管を徹底
節税効果を最大化するためのチェックポイント
- 経費とのバランス
- 助成金収入がそのまま利益にならないよう、関連経費を同年度に計上
- 税制優遇の併用
- 即時償却や特別償却制度を積極活用
- 資金繰りシミュレーション
- 補助金の入金タイミングを考慮し、納税資金を確保
- 専門家の活用
- 税理士や補助金申請代行業者と連携
今からできる行動ステップ
- 自社に適用できそうな助成金・補助金をリスト化する
- 最新情報を定期的に収集する仕組みを作る(メルマガ・公式サイトなど)
- 設備投資や雇用計画を立てる際は、制度活用を前提にシミュレーション
- 税務・申請両面で専門家に相談し、申請から活用まで一貫してサポートを受ける
まとめ
助成金や補助金は単なる資金援助ではなく、節税と事業成長を同時に実現できる戦略ツールです。
申請や手続きに手間はかかりますが、うまく活用すれば税負担を減らしつつ、設備更新・人材確保・事業拡大を後押しできます。
資金繰りの安定化と長期的な競争力強化のためにも、積極的に制度を調べ、実務に組み込んでいくことが重要です。










