共済の掛金上限はいくら?節税効果と限度額の賢い活用法

共済の掛金上限と節税効果、限度額の関係を説明する記事用アイキャッチ画像。棒グラフ、上昇矢印、コイン、パソコンを操作する男性のイラスト入り。
目次

共済制度の掛金上限と節税効果の関係性を正しく理解しよう

個人事業主や中小企業経営者にとって、共済制度は節税と将来の資金準備を同時に実現できる重要な制度です。
特に「小規模企業共済」や「倒産防止共済(経営セーフティ共済)」は、掛金が全額所得控除や必要経費に算入できるため、多くの経営者に利用されています。

しかし、多くの方が疑問に思うのが、
「掛金の上限はどれくらいなのか?」
「満額まで掛けたほうが本当に得なのか?」
という点です。

この疑問を解消しないまま加入してしまうと、

  • 資金繰りが苦しくなる
  • 思ったより節税効果が小さい
  • 受取時に想定外の税負担が発生する
    といった問題に直面する可能性があります。

掛金上限を把握しない節税計画の落とし穴

共済制度は、制度ごとに掛金の上限額節税効果の計算方法が異なります。
もし上限や計算の仕組みを理解せずに加入すると、以下のような落とし穴があります。

  • 上限を超える額を設定できない → 予想より節税額が少ない
  • 所得税率との相性を考慮していない → 効果が最大化されない
  • 受取時の課税を考慮しない → 将来の税負担が大きくなる

特に、掛金を上限まで設定しても、課税所得が低い場合は節税額が小さくなります。
逆に、課税所得が高い場合は上限いっぱいまで掛けることで、大きな節税効果が得られる可能性があります。


共済掛金上限と節税効果の結論

結論として、共済制度の掛金上限は次のとおりです。

制度名掛金上限節税区分主な対象者
小規模企業共済月額70,000円(年額84万円)所得控除個人事業主・中小企業役員
倒産防止共済(経営セーフティ共済)月額20万円(年額240万円)※掛金総額800万円まで必要経費算入法人・個人事業主
中小企業退職金共済(中退共)被共済者ごとに上限設定(1人あたり月額3万円まで)必要経費算入法人・個人事業主

この掛金上限と、加入者の所得税率・住民税率を掛け合わせることで、おおよその年間節税額を試算できます。
高所得者ほど節税額が大きくなり、満額掛金のメリットが高まります。


なぜ掛金上限が節税計画のカギになるのか

掛金上限は、その制度から得られる最大節税額を決定する要素です。
例えば小規模企業共済では、年額84万円が控除対象の限度額となるため、それ以上の掛金を支払っても節税効果は増えません。
逆に、倒産防止共済は掛金総額800万円に達するまで積み立て可能で、年間最大240万円を必要経費に算入できます。

このため、**「どの制度を優先して上限まで掛けるか」**を決めることが、節税効率を上げる第一歩です。

共済制度ごとの掛金上限と特徴

小規模企業共済

  • 掛金範囲:月額5,000円〜70,000円(500円単位で設定可能)
  • 年間上限:84万円(70,000円×12ヶ月)
  • 節税方法:掛金全額が「小規模企業共済等掛金控除」の対象となり、所得控除として所得税・住民税を同時に減らせる
  • 対象者:個人事業主、小規模法人の役員
  • 加入条件:常時使用する従業員が20人以下(商業・サービス業は5人以下)

倒産防止共済(経営セーフティ共済)

  • 掛金範囲:月額5,000円〜20万円(5,000円単位で設定可能)
  • 年間上限:240万円(20万円×12ヶ月)
  • 総額上限:800万円(積立総額が上限に達すると掛金の納付は停止)
  • 節税方法:掛金は必要経費(法人は損金)に全額算入できるため、所得税・法人税の対象所得を直接圧縮
  • 対象者:法人、個人事業主(取引先倒産リスクのある事業者)

中小企業退職金共済(中退共)

  • 掛金範囲:従業員1人あたり月額5,000円〜30,000円
  • 年間上限:1人あたり36万円(3万円×12ヶ月)
  • 節税方法:掛金は全額必要経費(法人は損金)として算入
  • 対象者:法人、個人事業主(従業員を雇用している場合)

掛金上限と節税効果の計算方法

節税額は、以下の式で概算できます。

節税額 ≒ 年間掛金 × (所得税率 + 住民税率)

※倒産防止共済や中退共の場合は、法人税率+住民税等を使用します。
※法人の場合、法人税等の実効税率はおおむね23%〜30%程度が目安です。


所得税率・住民税率の確認

  • 所得税率:課税所得によって5%〜45%の累進税率
  • 住民税率:全国一律10%(一部自治体で差異あり)

例えば、課税所得が500万円の場合、所得税率は20%、住民税10%で合計30%になります。


年収別節税効果シミュレーション(小規模企業共済)

掛金上限(年額84万円)を設定した場合の年間節税額の目安です。

年収課税所得目安所得税率住民税率節税額(年間)
300万円約150万円5%10%約12.6万円
500万円約300万円10%10%約16.8万円
800万円約550万円20%10%約25.2万円
1,200万円約900万円33%10%約36.1万円

年収別節税効果シミュレーション(倒産防止共済)

掛金上限(年額240万円)を設定した場合の年間節税額の目安です。
※法人税等実効税率を30%として計算。

年収(役員報酬)節税額(年間)
500万円約72万円
800万円約72万円
1,200万円約72万円

※倒産防止共済は経費算入のため、所得にかかわらず掛金×実効税率でほぼ一定の節税額になります。

掛金を満額に設定すべきケース

掛金上限まで拠出するべきかどうかは、節税効果だけでなく資金繰り・将来の受取時の税負担・事業計画を総合的に見て判断します。
以下のような条件に当てはまる場合は、満額掛金を検討する価値があります。

1. 高所得・高税率の状態が続く見込み

  • 所得税率が20%以上の場合、控除額の効果が大きい
  • 節税効果が掛金額に比例して大きくなるため、上限設定のメリットが高い

2. 長期加入を前提としている

  • 小規模企業共済は20年以上加入で解約返戻率100%以上になる
  • 倒産防止共済は掛金総額800万円まで積立可能で資金の戻りが確実

3. 資金繰りに余裕がある

  • 掛金は現金支出を伴うため、運転資金や生活費を圧迫しないことが前提

掛金を控えめにすべきケース

満額掛けると節税効果は大きくなりますが、次のような場合は注意が必要です。

1. 所得税率が低い場合

  • 課税所得が195万円以下(所得税率5%)では節税効果が限定的
  • 無理に上限まで掛けると、資金拘束によるデメリットの方が大きくなる

2. 資金繰りが不安定な場合

  • 掛金は毎月引き落としのため、売上が変動する事業ではキャッシュフローを圧迫
  • 無理のない掛金額(例:月1〜3万円)からスタートするのが安全

3. 短期で解約の可能性がある場合

  • 小規模企業共済は短期解約で元本割れ
  • 倒産防止共済も12ヶ月未満の解約は掛金の戻りがない

複数の共済制度を組み合わせる節税戦略

高い節税効果を狙うなら、制度ごとの特徴を生かして併用するのがおすすめです。

戦略例1:小規模企業共済+倒産防止共済

  • 小規模企業共済で年84万円の所得控除
  • 倒産防止共済で年240万円の必要経費算入
  • 合計最大324万円分の課税所得を圧縮可能

戦略例2:小規模企業共済+中退共

  • 事業主自身は小規模企業共済、従業員には中退共
  • 事業主・従業員双方の退職金制度を整備でき、福利厚生面のメリットも

戦略例3:所得変動型の掛金調整

  • 所得が高い年は上限掛金で節税効果を最大化
  • 所得が低い年は掛金を減額して資金繰り優先

掛金上限と資金繰りのバランスを取るポイント

  1. 毎年の利益予測と税率を確認して掛金額を設定
  2. 共済制度ごとに「節税額の上限」を把握
  3. 長期資金計画と連動させて加入(解約時期まで想定)

年収・税率別の掛金設定早見表(小規模企業共済)

※住民税は一律10%、所得税率は累進税率を使用。
※節税額=掛金×(所得税率+住民税率)で概算。

課税所得目安所得税率合計税率月掛金2万円月掛金5万円月掛金7万円(上限)
150万円5%15%約3.6万円約9.0万円約12.6万円
300万円10%20%約4.8万円約12.0万円約16.8万円
550万円20%30%約7.2万円約18.0万円約25.2万円
900万円33%43%約10.3万円約25.8万円約36.1万円

見方のポイント

  • 所得税率が高い層ほど上限掛金での節税効果が大きい
  • 所得税率が低い場合は、節税額と資金拘束のバランスを重視

掛金設定の実務的ステップ

1. 現状分析

  • 確定申告書や法人決算書で課税所得を把握
  • 所得税率・法人税等実効税率を確認

2. 掛金額のシミュレーション

  • 年間掛金×合計税率で節税額を試算
  • 無理のないキャッシュフロー内で設定

3. 加入手続き

  • 金融機関や商工会議所で申込
  • 必要書類:加入申込書、身分証明書、事業証明資料など

4. 掛金変更

  • 年1回変更可能(制度によっては随時可)
  • 利益が増えた年に増額、減った年に減額して節税効率を調整

共済の掛金上限活用のまとめ

  • 共済制度は掛金上限が節税額の限界を決める
  • 小規模企業共済は年84万円、倒産防止共済は年240万円(総額800万円)
  • 高税率層は上限まで掛けるメリットが大きいが、低税率層は資金拘束リスクを考慮
  • 複数の共済を組み合わせることで、節税と資金準備の両立が可能
  • 毎年の利益予測に応じた掛金調整が長期的な節税効果を高める

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