決算整理仕訳が節税に直結する理由とは?
決算の時期になると、多くの中小企業や個人事業主が「できるだけ税金を抑えたい」と考えます。そのためのカギを握るのが「決算整理仕訳」です。
仕訳と聞くと「面倒な会計処理」というイメージを持たれがちですが、実は 適切な決算整理仕訳を行うかどうかで税額が大きく変わる ことがあります。
例えば、経費の計上漏れや減価償却の処理忘れがあると、本来払わなくてもよい税金を余分に払うことになります。逆に、税制上認められた仕訳をきちんと活用すれば、黒字決算でもキャッシュを守りながら節税効果を得られるのです。
決算整理仕訳を軽視すると何が起こるのか
一方で、決算整理仕訳を軽視したまま申告してしまうと、以下のようなリスクがあります。
- 節税のチャンスを逃す
本来なら経費にできた支出を見落とし、税額が膨らむ。 - 税務署からの指摘リスク
法人税法や所得税法に基づいた処理を怠ると、後日の税務調査で修正申告を求められる可能性がある。 - 資金繰りの悪化
必要以上の税金を払うことで、翌期の運転資金が不足することもある。
つまり、決算整理仕訳は単なる事務作業ではなく、節税と資金繰りの両面を左右する経営戦略の一部 といえるのです。
節税を実現するために抑えるべき仕訳のポイント
では、具体的にどのような決算整理仕訳を意識すれば「節税に強い」決算ができるのでしょうか。結論から言えば、次の3つを意識することが重要です。
- 税務上認められる経費を漏れなく計上する
→ 仮払金や立替金の精算を忘れない。 - 税制優遇を活用した仕訳を行う
→ 少額減価償却資産の特例、交際費の上限活用など。 - 翌期以降の負担を見据えて計上を調整する
→ 貸倒引当金や賞与引当金の活用。
この3つの観点を押さえておくことで、単なる「申告のための処理」ではなく、「利益を守るための決算整理仕訳」が可能になります。
節税仕訳の重要性を理解するための基礎知識
では、なぜこれらの仕訳が節税に効果を発揮するのでしょうか。理由は税法上のルールと、会計上の認識時点にあります。
- 税法は「発生主義」を基本とする
お金の出入りではなく、取引の発生で収益・費用を認識する。 - 費用は「適切に認識されたもの」しか経費にできない
たとえ支払いがあっても仕訳が適切でなければ損金算入されない。 - 税務上の特例は「仕訳による処理」が前提
少額資産の一括償却や引当金の計上は、仕訳がなければ適用されない。
つまり、決算整理仕訳を正しく行うことで初めて「節税」という成果が得られるのです。
なぜ決算整理仕訳が節税につながるのか
税法と会計のズレを調整できる
決算整理仕訳の大きな役割は、会計と税務のズレを調整することです。
例えば、会計上は費用にできるが、税務上は認められないケースや、その逆もあります。このズレを放置すると、不要な課税や逆に否認リスクにつながります。
- 減価償却費 → 会計では自由に耐用年数を設定できるが、税務では法定耐用年数に従う必要あり。
- 交際費 → 会計上は全額費用計上できるが、税務上は上限がある。
- 引当金 → 会計上は自由に計上できても、税務上は認められる範囲が限定されている。
キャッシュアウトを伴わない経費を計上できる
もう一つの大きな理由は、実際にお金が出ていないのに経費計上できる仕訳があるという点です。
- 減価償却費
- 貸倒引当金
- 賞与引当金
これらは支払いを伴わずに「費用」として損金算入できます。つまり、キャッシュを減らさずに利益だけ圧縮でき、税金を抑える効果があるのです。
税制上の特例は仕訳が前提
少額減価償却資産の特例や中小企業投資促進税制など、税制優遇は「仕訳処理をしていること」が大前提です。処理を忘れれば単なる机上のルールに終わり、節税効果はゼロになります。
節税に効果的な決算整理仕訳の具体例
減価償却費の計上
- 目的:固定資産を取得した際の費用を分割して計上し、課税所得を圧縮する。
- ポイント:少額減価償却資産(取得価額30万円未満)は一括償却が可能(年間300万円まで)。
仕訳例(パソコンを20万円で購入)
減価償却費 200,000 / 備品 200,000
→ 全額を当期費用として計上でき、利益圧縮=節税につながる。
貸倒引当金の計上
- 目的:将来発生する可能性のある売掛金の回収不能に備える。
- ポイント:法人税法で認められる計算方法に基づき計上する必要あり。
仕訳例(売掛金1,000万円に対して1%計上)
貸倒引当金繰入 100,000 / 貸倒引当金 100,000
→ 実際の貸倒がなくても費用計上可能。
賞与引当金の計上
- 目的:役員・従業員に対する賞与を、発生年度の費用として計上する。
- ポイント:一定の条件(支給日、支給額が明確)を満たせば損金算入可能。
仕訳例(従業員賞与500万円を計上)
賞与引当金繰入 5,000,000 / 賞与引当金 5,000,000
→ 翌期に実際に支払うが、当期の損金として節税効果を得られる。
交際費の上限活用
- 目的:取引先との接待飲食費を損金算入。
- ポイント:中小法人は年800万円まで損金算入可能。1人あたり5,000円以下の飲食費は全額損金にできる。
仕訳例(取引先との会食費 30,000円)
交際費 30,000 / 現金 30,000
→ 上限内であれば損金算入可能。
棚卸資産の評価替え
- 目的:在庫の評価を適正に行い、利益を圧縮する。
- ポイント:低価法を採用すると、在庫の時価が下落した分を費用にできる。
仕訳例(在庫100万円が80万円に下落)
商品評価損 200,000 / 商品 200,000
→ 在庫の評価損を経費計上でき、課税所得を減らせる。
実務にどう取り入れるか:節税仕訳のチェックリスト
年度末に確認すべきポイント
決算整理仕訳は、期末にまとめて考えると漏れが発生しがちです。そこで、以下のようにチェックリスト形式で確認することをおすすめします。
| 項目 | チェック内容 | 節税ポイント |
|---|---|---|
| 減価償却費 | 固定資産台帳と一致しているか | 少額資産の即時償却を活用 |
| 貸倒引当金 | 売掛金・貸付金の残高を確認 | 税法上の計算方法を守る |
| 賞与引当金 | 支給日・支給額が明確か | 当期損金算入の条件確認 |
| 交際費 | 年800万円以内か | 1人5,000円以下の飲食費は全額損金 |
| 棚卸資産 | 時価が下落していないか | 低価法で評価損を計上 |
| 未払費用 | 水道光熱費・通信費など計上済みか | 翌期の支払いでも当期費用にできる |
税理士や会計ソフトを活用する
- 税理士に相談する
→ 法人税法に準拠した正しい仕訳かどうかを確認できる。 - クラウド会計ソフトを活用する
→ 決算整理仕訳の自動提案や固定資産台帳の管理が容易になる。
節税を意識した「日常の経理」も重要
決算時だけでなく、普段から以下を意識しておくと決算整理仕訳がスムーズになります。
- 経費の領収書を漏れなく保存
- 取引先ごとに交際費の内容をメモ
- 固定資産購入は30万円未満に分ける工夫を検討
まとめ:決算整理仕訳は節税の最終防衛ライン
決算整理仕訳は、単なる会計上の調整作業ではなく、「キャッシュを減らさずに税金を減らす」ための強力な手段です。
- 減価償却・引当金・評価損 → キャッシュアウトなしで利益圧縮
- 交際費・未払費用 → 支出のタイミングを柔軟に調整可能
- 特例や優遇制度 → 仕訳が前提であり、処理漏れは節税機会を失う
中小企業や個人事業主にとって、決算整理仕訳を正しく理解し活用することは、資金繰り改善と節税対策の両立につながります。
👉 今年の決算では、ぜひ「節税仕訳のチェックリスト」を活用し、無駄なく効果的に税金対策を行いましょう。

