フリーランスの「保険と経費」の関係を正しく理解していますか?
フリーランスとして独立すると、健康保険・生命保険・損害保険など、自分自身で保障を選び、加入する必要があります。
その際によくある疑問が、「保険料って経費になるの?」というものです。
実際、確定申告の際に保険料を「経費」に入れていいのか、「控除」にすべきなのかが分からず、困った経験がある方も多いでしょう。
結論から言えば、保険の種類や目的によって、「経費にできる保険料」と「できない保険料」が明確に分かれています。
この違いを理解せずに申告してしまうと、税務調査で否認されたり、思わぬ追徴課税を受けるリスクも。
そこで今回は、フリーランスが加入する主な保険の種類ごとに、「経費計上の可否」や「正しい税務処理方法」について、わかりやすく解説します。
「全部経費で落ちる」と思っていませんか?
たとえば次のようなケース、あなたにも思い当たる節はありませんか?
- 「所得補償保険って、仕事のためだから経費でしょ?」
- 「がん保険とか医療保険も、事業主なんだから当然経費になると思ってた」
- 「保険代理店に言われるがまま“経費で大丈夫”と言われたけど…不安」
実は、多くのフリーランスが“保険=全部経費”と誤解してしまい、税務処理ミスにつながることが少なくありません。
しかも、こうした誤りは申告時点では気づかれず、税務調査で数年後に否認されるケースも珍しくないのです。
経費にできるかどうかは「保険の種類」と「目的」で決まる
フリーランスが加入する保険には、大きく分けて以下の分類があります。
保険の種類 | 経費にできる? | 備考 |
---|---|---|
所得補償保険 | ◎ 経費可 | 就業不能時の収入補償が目的なら可 |
傷害保険(業務中) | ◎ 経費可 | 仕事中の事故やケガに備える場合 |
生命保険(死亡保障) | × 経費不可 | 個人の生活保障目的なら経費不可 |
医療保険・がん保険 | × 経費不可 | 原則は私的保障のため不可 |
火災保険・賠償責任保険 | ◎ 経費可 | 事務所や業務用機材に対してならOK |
自動車保険(業務使用) | ◎ 経費可 | 業務用車両に限定される場合 |
このように、“事業に直接関係する保険”であれば経費にできる一方、“個人の生活リスクに備える保険”は経費にはできません。
また、経費ではなく**「所得控除」や「税額控除」の対象となる保険もある**ため、使い分けと正しい処理が重要です。
経費にできる保険とできない保険の違いとは?
フリーランスの保険料が「経費になるかどうか」は、事業に直接関係する支出か否かによって判断されます。これは、所得税法上の「必要経費」の定義に基づきます。
必要経費の定義(所得税法)
その年分の総収入金額を得るために直接要した費用、またはその年分の総収入金額を得るために必要であったと認められる費用。
つまり、保険料が「売上や業務に関連している」と合理的に説明できるかどうかがポイントです。
経費にできる保険の特徴
特徴 | 内容 |
---|---|
① 事業遂行のためのリスクに備える | 事故・損害・賠償など事業リスクに対して |
② 所得補償のように仕事ができなくなった場合の損失補填 | 代替収入を補う役割を持つ保険 |
③ 業務用設備・資産にかかる保険 | 事業に利用するモノ(建物・車両など)が対象 |
経費にできない保険の特徴
特徴 | 内容 |
---|---|
① 個人の生活保障が目的 | 医療・がん・死亡などの私的リスクへの備え |
② 保険金の受取人が家族 | 業務との関係が希薄とみなされる |
③ 保険の支払いが事業と無関係 | 私用目的で契約された保険全般 |
ケース別に見る保険の税務処理
ここからは実際の保険の種類ごとに、経費処理ができるかどうかをわかりやすく整理していきます。
所得補償保険(就業不能保険)
- 概要:病気やケガで働けなくなったときに、月額収入の一部を補償する保険。
- ポイント:補償の対象が「業務不能時の売上損失」であるため、経費として計上可能。
- 注意点:保険金の使途(業務損失補填)を明示しておくと税務署にも説明しやすい。
損害賠償保険(事業活動中の対物・対人事故)
- 例:業務委託中に顧客の所有物を破損した場合の損害賠償に備える保険。
- 判断:業務上必要であるため、経費処理可能。
火災保険・動産保険(事務所・機材用)
- 判断:自宅兼事務所やPCなど、事業用として使用している部分のみ経費化可能。
- 補足:「家事按分(あんぶん)」処理を行い、業務使用割合に応じた経費化が必要。
生命保険・医療保険
- 原則:個人保障目的のため、経費にはできない。
- 例外:法人化後、会社契約であれば別の取り扱いあり(役員保険など)。
ChatGPT:
以下は第3回として、【行動|確定申告での正しい処理方法と注意点】および【まとめ|保険料を経費にする際の基本姿勢】を解説します。
確定申告での正しい処理方法と注意点
フリーランスが保険料を経費にする際は、以下のステップで処理を行うことが重要です。
確定申告時の仕訳・計上方法
ステップ | 内容 |
---|---|
① 証憑を確認 | 保険証券や領収書などを保管・分類 |
② 保険の種類を確認 | 経費に該当するかどうかを事前に判定 |
③ 勘定科目の選定 | 「保険料」や「損害保険料」などを使用 |
④ 家事按分が必要な場合 | 業務使用割合を明記し、合理的な基準で按分 |
⑤ 青色申告決算書 or 収支内訳書に記載 | 適切な経費欄に反映させることが必要 |
勘定科目の例
保険の種類 | 勘定科目(例) |
---|---|
所得補償保険 | 保険料または福利厚生費(個人事業主) |
損害保険(事業用) | 損害保険料 |
火災保険(事業所) | 地代家賃(事務所家賃含む)に按分することもあり |
自動車保険(業務用車両) | 車両費 |
税務署に説明できる根拠を持つことが重要
「この保険はなぜ経費にできるのか?」という問いに答えられるよう、合理的な説明ロジックを持っておくことが大切です。以下のような対応をおすすめします。
- 保険の内容と目的をメモしておく
- 経費処理に使った根拠資料(契約書・案内文)を保管
- 家事按分の割合根拠(業務時間や使用面積など)を記録
保険料を経費にする際の基本姿勢
保険料の経費処理は、節税を目的としつつも、正確性と説明責任が求められる分野です。以下のような姿勢で臨むと、トラブルを避けつつ安心して節税効果を得られます。
ポイントの振り返り
- 経費になるかどうかは業務関連性の有無で判断する
- 所得補償や損害保険など業務用の保険は計上可能
- 医療・生命保険など私的保険は経費不可
- 家事按分や証憑保管など記録管理が重要
- 税理士と相談しながら毎年見直すことも効果的