大病経験者にとって保険が重要な理由
フリーランスや個人事業主にとって、病気やケガによる就業不能は収入ゼロに直結します。特にがん・心疾患・脳卒中などの大病を経験すると、再発や合併症のリスクがあるため、健康な人と同じ条件では保険に入りにくくなります。
しかし、保険がなければ再治療時の医療費や生活費を自己資金だけで賄わなければならず、事業継続や家族の生活に深刻な影響を及ぼします。そのため「大病後でも加入できる保険」を知り、活用することがフリーランスにとって不可欠です。
大病経験者が直面する保険加入の壁
健康状態による加入制限
従来の医療保険やがん保険では、過去の病歴や入院歴を告知する必要があります。大病歴がある場合、以下のような結果になりやすいです。
- 加入を断られる(加入不可)
- 特定疾病が保障対象外となる(部位不担保)
- 保険料が割増になる
フリーランス特有のリスク
- 会社員と異なり、傷病手当金がないため、保険での備えが唯一の収入補填手段
- 社会保障制度は最低限で、長期治療が続けば貯金を取り崩すしかない
- 再発リスクがあるため「入れる保険が少ない」状況が長期にわたり続く
大病後でも加入可能な保険の種類
フリーランスが検討すべき「加入ハードルの低い保険」は大きく分けて次の4つです。
- 引受基準緩和型医療保険
持病や過去の入院歴があっても加入しやすい医療保険。 - 無選択型保険(告知不要保険)
告知や診査が不要で、誰でも加入可能。ただし保険料は割高。 - 就業不能保険(緩和型)
病気やケガで働けなくなった場合の生活費を補填する保険。 - 共済制度(医師の診査が不要な場合あり)
商工会議所やフリーランス協会などが提供する共済型保障。
これらを活用することで、大病後でも最低限の医療費・生活費保障を確保できます。
引受基準緩和型医療保険の特徴
どんな保険か
通常の医療保険では加入できない人でも、告知内容を一部緩和して加入できるのが特徴です。
- 例:「過去5年以内に入院・手術をしましたか?」 → 緩和型では「過去2年以内」など条件が軽減される
メリット
- 持病があっても加入しやすい
- 通常の医療保険に比べて保障範囲が広い
- 入院・手術・通院治療など基本的な保障を確保できる
デメリット
- 保険料は通常の1.5〜2倍程度と割高
- 契約から一定期間(1〜2年)は保障が半額など制限あり
向いているフリーランス
- がんや心疾患の治療歴がある人
- とにかく「何らかの医療保障を確保したい」と考える人
無選択型保険(告知不要型)の特徴
どんな保険か
健康状態に関する告知が一切不要で、誰でも加入可能な保険です。
メリット
- 直近で大病を経験した人でも加入できる
- 保険加入を完全に諦めなくて済む
- 短期間で契約可能
デメリット
- 保険料が非常に高い
- 保障金額が少ない(入院日額3,000円程度までなど)
- 契約から1年以内の病気入院は保障対象外になるケースあり
向いているフリーランス
- 健康状態が悪く、緩和型にも入れなかった人
- 最低限の保障だけでも確保したい人
実際に利用できる保険商品と制度の具体例
引受基準緩和型医療保険
通常の医療保険では加入時に「過去5年以内に入院・手術歴があるか」など細かく聞かれますが、引受基準緩和型は健康状態の告知内容を大幅に少なくしているのが特徴です。
- 特徴
- 健康告知は「過去3か月以内に入院・手術の有無」などシンプル
- 保険料は割高だが、大病経験者でも加入しやすい
- 給付内容は通常の医療保険とほぼ同等
- デメリット
- 契約から一定期間(例:1年)は保障が半額になる場合あり
- 保険料が通常より2~3割高め
無選択型医療保険
健康状態の告知を一切しないタイプで、持病や大病歴に関わらず加入できるのが最大のメリットです。
- 特徴
- 告知不要、誰でも加入可
- 高齢者や再発リスクがある人でも利用可能
- デメリット
- 保険料がかなり高額
- 入院・手術給付金が低めに設定されている
- 一定期間は保障が制限されることが多い
小規模企業共済とフリーランス協会の保険
病歴があっても加入可能な制度的な補償もあります。
- 小規模企業共済
- 独立行政法人が運営する制度で、加入に健康審査は不要
- 老後資金や廃業時の退職金準備に活用可能
- フリーランス協会の保険(ベネフィット)
- 所属会員であれば団体保険に加入でき、審査が緩やか
- 賠償責任補償、所得補償、福利厚生までカバー
損害保険型の所得補償保険
生命保険ではなく損害保険会社が提供する「就業不能保険」や「所得補償保険」も検討対象になります。これらは健康状態の告知基準がやや緩く、フリーランスが収入ダウンに備えるのに役立ちます。
加入しやすさ比較表
| 保険種類 | 告知の有無 | 保険料 | 保障範囲 | 向いている人 |
|---|---|---|---|---|
| 引受基準緩和型医療保険 | 簡易告知あり | 割高 | 入院・手術 | 過去に大病歴あるが再発リスクが低い人 |
| 無選択型医療保険 | 告知なし | 高額 | 入院・手術(制限あり) | 大病後・再発リスク高い人 |
| 小規模企業共済 | 告知不要 | 掛金制 | 老後・廃業時 | 制度を活用したい全フリーランス |
| フリーランス協会団体保険 | 審査緩やか | 団体割引 | 賠償・所得補償 | 広く備えたいフリーランス |
| 損害保険型所得補償 | 簡易告知あり | 標準~やや割高 | 就業不能 | 収入減少リスクに備えたい人 |
大病後に保険を選ぶときのチェックポイント
1. 告知条件を必ず確認する
緩和型・無選択型といっても、契約条件は保険会社ごとに異なります。
- 告知の対象期間(例:過去2年以内の入院歴か、5年以内か)
- 保険対象外となる疾病(部位不担保が設定されているか)
- 保障が制限される待機期間の有無
ポイント:同じ「緩和型」でも内容は大きく違うため、商品パンフレットや約款を必ず確認しましょう。
2. 保険料と保障額のバランスを見る
無理に高額保障を選ぶと、長期的に払えなくなり契約失効につながります。
- 月々の保険料は「事業収入の3〜5%以内」が目安
- 医療費・生活費の必要額を算出し、保障を逆算する
3. 保障の優先順位を決める
フリーランスが大病後に最優先で確保すべきは次の3つです。
- 医療費保障(入院・手術・通院)
- 所得補償(働けない期間の生活費)
- 長期資金の準備(老後や廃業時の資金)
優先度を明確にすれば、余計な特約を外し無駄な保険料を省けます。
フリーランスが実践すべき保険選びのステップ
ステップ1:必要な保障額を試算する
- 治療費の自己負担(高額療養費制度を差し引いた額)
- 毎月の生活費(家賃・住宅ローン・食費・教育費)
- 事業継続に必要な固定費(オフィス賃料・通信費など)
これらを基準に「最低限必要な保障」を計算します。
ステップ2:複数の商品を比較する
- 引受基準緩和型保険 → 保険料と保障範囲を比較
- 無選択型保険 → 待機期間や支払制限を確認
- 所得補償保険 → 給付開始要件や期間を比較
コツ:ネットの比較サイトだけでなく、保険代理店やFP相談を活用して条件を見比べること。
ステップ3:制度系の保障も組み合わせる
- 小規模企業共済 → 廃業・老後資金対策
- 商工会議所共済やフリーランス協会 → 団体割引や所得補償
- 国民健康保険の「高額療養費制度」 → 自己負担限度額を確認
民間保険と制度系を組み合わせることで、過不足のない保障を設計できます。
ステップ4:定期的に見直す
- 大病後でも体調が安定すれば、より条件の良い保険に切り替え可能なケースがあります。
- 加入後も「毎年の更新時」や「事業の状況変化」に合わせて見直す習慣を持つことが重要です。
行動チェックリスト(簡易版)
- 告知条件を確認したか?
- 保険料が事業収入に対して無理のない水準か?
- 優先すべき保障を整理したか?
- 制度系の保障と組み合わせを検討したか?
- 定期的に見直す計画を立てたか?
大病後の保険選びでよくある失敗と回避策
1. 保険料が高すぎて継続できない
- 失敗例:治療歴があるため「とにかく加入できる保険を」と無選択型に加入。月額保険料が高額で、数年後に支払えなくなり解約。
- 回避策:必要最低限の保障額に抑え、制度系保障(共済・高額療養費制度)と組み合わせる。
2. 告知条件を見落とす
- 失敗例:過去の通院歴を正直に告知せず加入 → 後に発覚し「契約解除」されてしまう。
- 回避策:告知は正直に行う。引受基準緩和型や無選択型など「入れる保険」を活用。
3. 保障の偏り
- 失敗例:医療費だけに注目し、所得補償を準備しなかった結果、治療中に生活費が不足。
- 回避策:医療費・生活費・老後資金をトータルで考え、優先順位を明確にする。
4. 世帯全体での設計を忘れる
- 失敗例:本人の保険だけに注目し、配偶者や子どもの保障が手薄。
- 回避策:世帯収支を見直し、全体の保障バランスを確認する。
記事全体のまとめ
- フリーランスは大病後に保険加入が難しいが、緩和型・無選択型・所得補償・共済制度といった選択肢がある。
- 保障の優先順位は ①医療費 ②所得補償 ③長期資金。
- 保険料と保障のバランスを見極め、無理なく続けられる契約が重要。
- 制度系保障(高額療養費制度・小規模企業共済・フリーランス協会)を併用することで、過不足のない保障が可能。
- 定期的な見直しと、世帯単位での保障設計を意識することが安心のカギ。
フリーランスは「働けない=収入ゼロ」のリスクが大きいため、大病後でも加入可能な保険を上手に活用して、事業と生活の安定を確保しましょう。

