フリーランスの経費にできるもの・できないもの|税務調査で困らない経費計上術

フリーランスが経費にできるもの・できないものを説明するイラスト。ノートパソコンで作業する人物と、チェックマークとバツ印のリスト、電卓、レシート、財布などのアイコンが描かれている。
目次

フリーランスにとって経費の正しい理解が重要な理由

フリーランスとして活動していると、「これって経費になるのかな?」と迷う場面は少なくありません。経費の範囲を正しく理解していないと、本来認められるはずの支出を見落として節税の機会を逃したり、逆に認められない支出を計上して税務調査で指摘されるリスクが高まります。
経費は単に節税のためだけでなく、事業の収益性を正しく把握するための基盤でもあります。無駄な支出を避け、事業に必要な投資を行う判断材料になるため、正確な経費計上は経営判断にも直結します。


経費の判断基準は「事業との直接的な関連性」

経費にできるかどうかの判断基準は、税法で明確に定義されています。簡単にいえば、**「その支出が事業の遂行上、必要であるか」**がポイントです。
国税庁の見解によれば、経費とは「その年の総収入金額を得るために直接要した費用及び販売費、一般管理費その他これらに準ずる費用」とされています。

判断の3つのポイント

  1. 事業に必要な支出であること
    収入を得るために不可欠なものであるか。
  2. 私的利用分は除外すること
    プライベートな用途と事業用が混在している場合は、事業用割合のみ経費にできる。
  3. 領収書や証拠が残せること
    証拠書類がない場合、経費として認められない可能性が高い。

経費にできるものの代表例

ここからは、フリーランスが経費として計上できる代表的な項目を整理します。以下はあくまで一般例であり、業種や事業内容によって異なる場合があります。

経費項目具体例注意点
旅費交通費電車代、バス代、タクシー代、飛行機代事業目的の移動に限る
通信費携帯電話代、インターネット代私用分は除外。按分計算が必要
消耗品費文房具、プリンターインク、ノートPC(10万円未満)10万円以上は資産計上が必要
会議費打ち合わせ時の飲食代接待交際費と区別する
広告宣伝費SNS広告費、チラシ印刷費集客目的であることが条件
水道光熱費事務所の電気・水道・ガス代自宅兼事務所は按分が必要

経費にできないものの代表例

一方で、支出したからといってすべて経費にできるわけではありません。事業との直接的な関連がないものや、法律で制限されている支出は経費になりません。

経費にならない項目理由
個人的な生活費事業との関連性がない
罰金・過料・反則金法律違反による支出は経費不可
所得税・住民税事業経費ではなく個人の税負担
私用の旅行や交際費事業目的が明確でない支出

グレーゾーン支出の扱い方

経費かどうか判断が微妙な支出も存在します。例えば、自宅兼事務所の家賃や光熱費、仕事にも使う車の維持費などです。
こうした場合は合理的な按分方法を用いることが重要です。面積比や使用時間比など、客観的に説明できる基準で割合を計算し、その根拠を記録に残しておくことで、税務調査での指摘を回避しやすくなります。

経費判断を誤ると発生する3つのリスク

フリーランスが経費を計上する際、誤った判断をすると以下のようなリスクが発生します。

  1. 追徴課税や延滞税の発生
    認められない経費を計上していると、税務調査で修正申告を求められ、追加の税金に加えて延滞税や過少申告加算税が課されます。
  2. 税務署からの信用低下
    不自然な経費計上が続くと、将来的にも税務調査の対象になりやすくなります。
  3. 経営判断の誤り
    実際の利益よりも少なく見積もってしまい、資金繰りや事業計画に悪影響を与える可能性があります。

税務署が注目する経費のポイント

税務署は税務調査で経費を重点的にチェックします。その際、特に注目されやすいのは以下の項目です。

注目項目理由
接待交際費私的利用との区別が難しい
会議費飲食を伴う場合、交際費と区別が必要
通信費個人利用との按分が適切か確認
旅費交通費旅行が私的なものではないかチェック
消耗品費高額なものは資産計上すべき可能性
家賃・光熱費自宅兼事務所の場合の按分根拠を確認

実際に否認された経費事例

ここでは、税務調査で否認された実例を挙げ、どのような点が問題になったのかを整理します。

事例1:家族との旅行費を経費計上

  • 内容:フリーランスのデザイナーが、家族旅行中に観光地で撮影した写真をポートフォリオに使用したとして旅行費を全額経費計上。
  • 結果:観光や私的活動の割合が大きく、事業目的が明確でなかったため否認。
  • 教訓:事業利用部分のみ按分計上し、業務日誌やスケジュールを残すこと。

事例2:高額なブランド品を経費に

  • 内容:動画配信者が高級ブランドのバッグや服を経費計上。
  • 結果:事業専用での利用実態が確認できず、私的利用と判断され否認。
  • 教訓:事業専用として継続的に使用している証拠(出演動画や宣材写真など)を残す。

事例3:領収書の紛失

  • 内容:広告費や交通費などの領収書を紛失し、メモ書きだけで経費計上。
  • 結果:証拠不十分で否認。
  • 教訓:電子データ化や日々の整理で証拠保全を徹底。

グレーゾーン経費の判断方法

グレーな支出については、次の手順で判断すると安全です。

  1. 事業との関連性を具体的に説明できるか
  2. 私用部分を合理的に除外できるか
  3. 領収書や契約書など証拠があるか
  4. 同業者でも同じ判断をしそうか

この4つをクリアできない場合は、経費計上を見送るか、按分して計上する方が安全です。

経費を正しく計上するための基本ルール

経費計上は「事業に必要な支出である」ことが条件ですが、実務では以下の3つを意識するだけで精度が上がります。

  1. 事業関連性を明確にする
    • 「なぜこの支出が事業に必要だったのか」を第三者に説明できるようにしておく。
    • 領収書の裏や会計ソフトの備考欄に用途を簡単にメモしておく。
  2. 証拠を必ず残す
    • 領収書、請求書、契約書、メール履歴、打ち合わせメモなど複数の証拠を残す。
    • 電子帳簿保存法対応のスキャン保存やクラウド会計ソフトを活用。
  3. 私的利用との区分を徹底する
    • 自宅兼事務所の家賃や光熱費は、事業利用割合を算定して按分。
    • スマホやパソコンなどは使用時間や用途を記録し、合理的な按分率を設定。

節税に役立つ経費管理の仕組み

1. 会計ソフトでリアルタイム入力

  • 効果:漏れや重複を防ぎ、経営状況を即座に把握可能。
  • おすすめ:freeeやマネーフォワードなど、銀行口座・クレジットカードと連動するクラウド会計。

2. 領収書はすぐにデジタル化

  • スマホアプリで撮影し、日付・金額・用途を登録。
  • 紙の紛失リスクをなくし、検索も容易になる。

3. 月1回の経費レビュー

  • 按分率や経費区分が妥当かを月次で確認。
  • 税理士に月次で共有すれば、年末の大幅修正を回避できる。

経費の種類別・計上の注意点

経費の種類主な内容注意点
消耗品費文具、パソコン周辺機器高額(10万円以上)は資産計上の可能性
旅費交通費出張の交通費、宿泊費私用部分は除外、スケジュール表を残す
通信費スマホ、インターネット按分率の根拠を明確に
接待交際費取引先との会食費同席者、目的を記録
広告宣伝費HP制作費、チラシ印刷自己消費や私的利用は除外

税務署に疑われにくい証拠の残し方

  1. 領収書の裏に利用目的を書く
    「〇月〇日 取引先A社との打ち合わせ」など簡単でOK。
  2. デジタル証拠も保管
    メールのやり取り、スケジュールアプリ、契約書のPDFなど。
  3. 第三者が見ても合理的と判断できる記録
    同業者が見ても「これは業務だ」と納得できる内容を意識。

経費計上の優先順位と節税インパクト

  • 優先度高:事業に直結し、金額が大きい経費(広告費、外注費、家賃など)
  • 優先度中:定期的に発生し、按分で節税効果が出る経費(通信費、水道光熱費)
  • 優先度低:少額で管理コストが高い経費(軽微な消耗品など)

経費計上は**「額の大きいもの」から確実に証拠を残して申告する**ことで効率的に節税が可能です。

誤計上を防ぐための経費チェックリスト

経費を申告する前に、以下の項目を確認することで、税務調査での指摘リスクを大幅に減らせます。

チェック項目確認内容OK/NGの目安
事業関連性の有無その支出が事業に必要だった根拠を説明できるか「説明可能」ならOK
証拠の保存領収書・請求書・契約書など証拠があるか紛失や不鮮明ならNG
按分の妥当性家事按分の根拠を明確にしているか利用割合の記録が必要
計上時期の適正発生日ベースで計上しているか支払日ベースはNG(例外あり)
税務上の制限接待交際費・減価償却などの上限ルールに違反していないか制限超過はNG

フリーランスがやりがちなNG経費例

1. 家族との私的食事を接待交際費に計上

  • NG理由:事業と無関係な食事は経費にならない。
  • 対策:取引先や業務関係者との食事のみ計上し、同席者と目的を記録。

2. 旅行ついでの出張費

  • NG理由:観光部分は私的支出とみなされる。
  • 対策:出張と私用日程を明確に区分し、業務日程の証拠を残す。

3. 私用メインのスマホ料金を全額計上

  • NG理由:私用部分が含まれると全額否認の可能性。
  • 対策:事業利用割合を算出して按分計上。

4. 自宅の家賃や光熱費を全額経費に

  • NG理由:生活部分は経費にならない。
  • 対策:事務所面積比や使用時間比で按分。

5. 高額な資産を消耗品費で一括経費化

  • NG理由:10万円以上の資産は減価償却が必要(例外あり)。
  • 対策:少額減価償却資産制度や一括償却資産制度を検討。

税務調査で指摘されやすいポイント

  1. 私的利用が混ざっている支出
    • 家族旅行・自家用車・衣服などは特に注意。
  2. 証拠不足
    • 領収書や契約書がない支出は経費否認の可能性大。
  3. 計上区分の誤り
    • 資産と経費の判定ミス、按分率の不合理。
  4. 高額経費の妥当性
    • 市場価格や業務必要性が低い場合は否認リスク。

安全に経費計上するための実践アドバイス

  • グレーな支出は税理士に相談
  • 証拠は紙+デジタルの両方で保管
  • 按分率は年1回見直し
  • 高額な支出は事前に経費計上方法を検討

まとめ

フリーランスの経費計上は、「事業関連性」と「証拠」の2本柱を守れば、大きなトラブルを避けられます。
また、按分や計上区分のルールを理解し、グレーゾーンは早めに専門家へ相談することが重要です。

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