決算前に間に合う節税チェックリスト|法人・個人事業主向け完全ガイド

決算前の節税対策をチェックするビジネスマンとチェックリストのイラスト
目次

決算前にやっておきたい節税の全体像を押さえる

決算期が近づくと、経営者や個人事業主にとって「今年の税金はどのくらいになるのか」「まだできる節税はないか」という課題が頭をよぎります。
節税は思いつきで行うものではなく、決算前の限られた期間で効果的に行うためには、事前にチェックリストを用意して抜け漏れなく実行することが重要です。

本記事では、税務のプロの視点から、決算直前でも間に合う節税方法を体系的に整理し、実務に落とし込みやすい形でご紹介します。
事業の規模や業種にかかわらず活用できる内容になっているので、毎年の決算前のルーティンとして取り入れることをおすすめします。


節税が決算前の短期間で重要になる理由

節税対策は本来、年間を通して行うのが理想です。
しかし、実際には日々の業務が優先され、気づけば決算月が迫っている…というケースは珍しくありません。
このタイミングでの節税は、以下のような意味を持ちます。

  • 税負担の軽減
     法人税や所得税は利益額に応じて決まるため、適切な支出計上や控除活用で利益を圧縮すれば、直接的に納税額が下がります。
  • 資金繰りの安定化
     節税によって手元資金の流出を抑えることで、翌期の運転資金や投資資金を確保できます。
  • 来期への布石
     設備投資や福利厚生制度の充実など、来期以降の成長基盤を整える施策と節税を同時に行えます。

決算前の節税で押さえるべき3つの視点

決算前に間に合う節税策は、大きく分けると以下の3つの視点からチェックできます。

  1. 経費計上の最終確認
     未計上の経費や前倒しできる支出を整理する。
  2. 控除制度の活用
     共済や保険、税額控除制度などを漏れなく利用する。
  3. 資産・負債の見直し
     棚卸資産や貸倒れ債権の処理、減価償却の方法を最適化する。

これらの視点をもとに、次章からは実際のチェック項目を具体的に見ていきます。


経費計上の最終確認ポイント

未払い経費の計上

決算日までに発生しているが、まだ支払っていない経費は未払費用として計上可能です。
例:外注費、地代家賃、広告宣伝費、通信費など。
請求書や契約書を確認し、計上漏れがないか洗い出します。

前払できる経費の活用

翌期の費用を前もって支払うことで、当期の利益を圧縮できます。
ただし、短期前払費用の特例や契約内容による制限があるため、税務上認められるか確認が必要です。
例:リース料、保守契約料、保険料(損害保険)など。

固定資産の少額備品ルール

取得価額が10万円未満の備品は全額をその期の経費にできます。
さらに30万円未満の場合でも少額減価償却資産の特例を活用すれば一括経費計上が可能(中小企業等の限定条件あり)。
パソコン、事務机、棚などの購入は決算前に検討しましょう。


控除制度を最大限活用する

小規模企業共済

個人事業主や役員が加入できる退職金制度で、掛金が全額所得控除になります。
掛金は月額1,000円〜70,000円まで自由に設定可能で、年度内にまとめて前納も可能です。

経営セーフティ共済(倒産防止共済)

取引先の倒産などによる連鎖倒産を防ぐ制度。掛金は全額損金算入でき、最大800万円まで積み立てられます。
解約時は返戻金が戻りますが、その際は益金算入となるためタイミングを見極めることが重要です。

法人保険

一定条件を満たす法人向け生命保険や損害保険を利用することで、保険料の一部または全額を損金算入できます。
ただし、税制改正の影響で損金算入範囲が限定されているため、契約形態の選定がポイントです。

資産・負債の見直しでできる節税

棚卸資産の評価

棚卸資産(在庫)の評価方法は、原価法や低価法などがあり、低価法を適用することで評価損を計上できる場合があります。
例えば、売れ残っている商品や陳腐化した在庫は時価が下がっていれば評価損を計上可能です。

貸倒損失の計上

回収不能が明らかな売掛金や貸付金は、貸倒損失として損金算入できます。
税務上の貸倒れ要件(法律上の債権消滅、取引停止後1年以上経過など)を満たしているかを確認しましょう。

減価償却の加速

固定資産の減価償却は法定耐用年数に基づきますが、少額資産の特例や即時償却制度を活用すると一括で経費化できるケースがあります。
中小企業経営強化税制を利用すれば、一定設備の取得額を即時償却または税額控除可能です。


実務で使える節税チェックリスト(決算前版)

チェック項目内容必要書類実施期限
未払い経費の計上決算日までに発生済みだが未払いの経費を計上請求書、契約書決算日
前払経費の活用翌期分の費用を当期で支払う(短期前払費用特例)契約書、支払証明決算日
少額備品の購入10万円未満は全額経費、30万円未満は特例利用可請求書決算日
小規模企業共済掛金全額所得控除、前納も可契約申込書年内
倒産防止共済掛金全額損金、最大800万円契約申込書年内
法人保険損金算入可能な契約形態の確認保険契約書決算日
棚卸資産の評価時価下落分を評価損として計上在庫リスト決算日
貸倒損失回収不能債権の損失計上債権管理台帳決算日
減価償却の加速特例適用で一括償却または税額控除資産台帳決算日

実際の節税成功事例

事例1:中小製造業(決算1か月前)

在庫評価を見直し、時価が下落していた部品を評価損計上。利益圧縮で法人税額が約50万円減少。翌期は在庫管理を徹底する仕組みを導入。

事例2:IT系法人(決算2週間前)

役員の小規模企業共済加入と倒産防止共済の掛金前納を実施。合計200万円の損金算入で法人税・地方法人税の合計約60万円削減。

事例3:個人事業主(決算月)

パソコンやソフトウェアを少額資産として購入し即時償却。業務効率化と節税を同時に実現。


節税チェックリストを実行するためのステップ

ステップ1:決算3か月前に予測損益を作成

税理士や会計担当者とともに、決算見込み利益を算出します。
これにより、必要な節税額の目安を把握できます。

ステップ2:適用可能な節税策を選定

事業規模・資金状況・将来計画に合わせて実行する節税策を絞り込みます。
すべての制度を無理に使うのではなく、キャッシュフローへの影響も考慮します。

ステップ3:必要書類と資金の準備

契約書、請求書、支払証明など必要書類を事前にそろえ、資金手当も行います。

ステップ4:決算日までに実行

節税策は決算日までの支出・契約が条件となることが多いため、期限管理が最重要です。


まとめ

  • 決算前の節税は「経費計上」「控除制度」「資産・負債の見直し」の3視点からチェック。
  • 制度の条件や適用可否を税理士と確認しながら進めることが成功のカギ。
  • 節税は単年度の税金を減らすだけでなく、事業の将来戦略と結びつけて考えることで効果が高まります。

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