目次
はじめに
「退職金って、うちのような中小企業でも準備すべき?」
「毎月の保険料で将来の退職金を積み立てられると聞いたけど本当?」
中小企業の経営者の多くが、将来の退職金準備を後回しにしがちですが、法人保険を活用すれば計画的に・節税しながら退職金の原資を用意することが可能です。
本記事では、法人保険を使って退職金を準備する仕組み、注意点、選ぶべき保険の種類まで、税理士の視点からわかりやすく解説します。
なぜ退職金の準備が必要なのか
中小企業における退職金準備は、実は非常に重要です。
1. 退職時にまとまった資金が必要になる
- 長年経営に従事してきた役員の功労に報いるため
- 退職後の生活資金として欠かせない
2. 法人の損金処理で節税できる
- 退職金は原則として法人の損金扱いが可能
- 個人側では「退職所得」として優遇税制が適用
法人保険で退職金を準備する仕組み
法人保険を使えば、毎月の保険料を「損金処理」しながら解約返戻金を将来の退職金に充てることができる仕組みです。
■ 基本的な構造
区分 | 内容 |
---|---|
契約者 | 法人 |
被保険者 | 経営者(または役員) |
受取人 | 法人または役員遺族 |
■ 退職時の流れ
- 解約 → 解約返戻金を法人が受け取る(益金計上)
- 退職金として個人に支給(損金計上)
法人保険の種類と退職金準備への適合性
① 長期平準定期保険
- 解約返戻金があり、保険料の一部または全額が損金処理可能
- 一定の年数ごとに返戻金率が上がる
- 解約時に退職金として原資に充当できる
② 養老保険(逓増型含む)
- 保険期間満了時に満額返戻(満期保険金)あり
- 資産性が高いため税務上は要注意
- 現在は「資産計上部分」として損金割合に制限あり
③ 無解約返戻型定期保険(節税効果は少ない)
- 掛け捨てだが、100%損金処理可能
- 原則退職金準備には不向きだが、死亡保障目的なら活用可能
節税効果と税務上の取扱い
■ 法人側(支払う側)
内容 | 損金処理の扱い |
---|---|
保険料支払い時 | 商品によって全額・一部損金 |
解約返戻金受け取り時 | 益金計上が必要 |
退職金支払い時 | 損金処理可能(適正額に限る) |
→ 保険を使えば「損金 → 益金 → 再度損金」となり、利益の繰延べが可能
■ 個人側(受け取る側)
- 退職金は「退職所得」扱い
- 税金が大幅に軽減される(勤続年数に応じた退職所得控除が使える)
例:勤続30年の役員が1500万円の退職金を受け取った場合
→ 約500万円程度が課税対象(実効税率10~20%以下になるケースも)
法人保険による退職金準備のメリット
1. 節税しながら計画的に積み立てられる
- 保険料は損金処理でき、節税効果あり
- 解約返戻金を将来の退職金原資にできる
2. 財務の見える化・引当の代替
- 実質的な退職給付引当金の代替手段として機能
- 節税効果が得られる点が魅力
3. 相続対策・事業承継と連携も
- 死亡保険金受取で事業承継資金に活用可能
- 保険金非課税枠(法定相続人×500万円)などを利用すれば相続対策にも
注意点とリスク
1. 保険商品の内容を誤ると節税にならない
- 資産性が高すぎると税務上否認されるリスクあり
- 事前に税理士と設計確認が必要
2. 短期で解約すると元本割れする場合も
- 解約返戻率が一定期間低く設定されている商品も多数
3. 解約時は益金となるため、税負担が発生
- 退職金支給と同じタイミングで行うなど、タイミングのコントロールが重要
法人保険で退職金を準備する手順
- 【目的明確化】退職時期・金額を大まかに設計
- 【保険商品選定】長期平準定期保険など目的に応じて選ぶ
- 【契約設計】契約者・被保険者・受取人を正しく設定
- 【保険料支払】月額ベースで損金処理を実施
- 【退職時に解約】返戻金を受け取り、退職金として支給
税理士がすすめる活用アドバイス
- 一括解約と退職金支給のタイミングを一致させる
- 節税効果だけに偏らず、キャッシュフローも考慮
- 税務調査リスクを減らすため、就業規則や退職金規程を整備しておくこと
まとめ
法人保険を活用すれば、節税しながら退職金を計画的に積み立てることが可能です。
ただし、保険の選定・契約設計・解約タイミングには専門知識が必要です。
税理士や保険代理店と連携して、自社にとって最適な形での退職金準備を進めましょう。