子育てと仕事を両立するフリーランスが抱える不安
フリーランスとして働く魅力は、時間や場所に縛られず、家族との時間を大切にできることです。
しかし、その自由さの裏側には、会社員のような福利厚生や保障がないという現実があります。
特に子育て中の場合、教育費の確保や万一のときの生活保障が重要です。
会社員なら厚生年金や団体保険でカバーできる部分も、フリーランスは自分で備えなければなりません。
子どもの教育費は長期にわたって必要になり、同時に親に万一のことがあれば、生活や進学に大きな影響が及びます。
こうしたリスクを把握し、効率的な保険設計を行うことが、子育て世代フリーランスの重要課題です。
教育費の現実:必要額はどのくらいか
教育費は子どもの進路や選択によって大きく変わります。文部科学省や日本政策金融公庫の調査を参考にすると、以下のような目安になります。
| 学校種別 | 幼稚園~高校(15年間) | 大学(4年間) | 合計(自宅通学) |
|---|---|---|---|
| 公立のみ | 約540万円 | 約250万円 | 約790万円 |
| 公立+私立混合 | 約880万円 | 約400万円 | 約1,280万円 |
| 私立中心 | 約1,770万円 | 約550万円 | 約2,320万円 |
※大学進学時に一人暮らしとなれば、仕送りや生活費が追加で年間100〜150万円必要となります。
つまり、教育費は1,000万円前後〜2,000万円以上を見込む必要があります。
フリーランス家庭の教育費リスク
フリーランスは収入が変動しやすく、特に以下のリスクが教育費の確保を難しくします。
- 売上減少による貯蓄ペースの停滞
景気や取引先の事情で収入が不安定になり、計画通りの積立ができなくなる。 - 病気・ケガによる休業
働けない期間は収入がゼロになる可能性がある。 - 親の死亡や高度障害
教育費の準備途中で収入源が途絶える。
これらのリスクは、生命保険や就業不能保険などで備えることが可能です。
保険設計の出発点は「必要保障額」の計算
保険を選ぶ前に、まずは「必要保障額」を算出します。
必要保障額とは、万一のときに家族の生活を守るために必要な金額のことです。
計算の基本は以下の式です。
コピーする編集する必要保障額 = 子どもの教育費合計
+ 残された家族の生活費(一定年数分)
- 既にある貯蓄・資産
- 公的保障(遺族年金など)
公的保障の目安
自営業者が加入する国民年金からは、遺族基礎年金が支給されます。
例えば子ども1人の場合、年間約100万円強が支給されます(子どもが18歳到達年度末まで)。
これを差し引いて不足分を生命保険でカバーするのが基本戦略です。
子育て中フリーランスが選びたい保険の種類
教育費と生活保障を両立させるには、複数の保険を組み合わせるのが効果的です。
1. 定期保険(掛け捨て)
- 期間限定で高額保障を確保できる
- 教育費が多くかかる時期だけ保障額を厚くできる
- 掛け捨てなので保険料が安い
2. 収入保障保険
- 万一の場合、毎月一定額を年金形式で受け取れる
- 生活費や教育費に充てやすい
- 定期保険より保険料を抑えられるケースも
3. 就業不能保険
- 病気やケガで働けなくなったときの収入を補償
- 教育費の積立を継続するための保険的役割
保険料を最適化する選び方と注意点
年齢と健康状態による保険料差
生命保険や就業不能保険は、加入時の年齢と健康状態で保険料が大きく変わります。
特にフリーランスは定年がない分、加入タイミングを逃すと将来の保険料負担が増加します。
- 若いうちに長期契約を結ぶと、保険料が固定され、総支払額を抑えられる
- 健康状態が良いうちに加入することで、告知内容による制限や割増保険料を回避できる
保険期間と保障額の設定
保険は「いつまで・いくら保障するか」でコストが大きく変わります。
子育て中の場合は、子どもが独立するまでの期間を目安に設定するのが基本です。
例:子どもが5歳の場合
→ 大学卒業までの17年間を保障期間とする
保障額は、教育費+生活費の不足分をカバーする金額で設定します。過大な保障は保険料のムダ遣いにつながります。
保険料負担と家計バランス
総務省の家計調査によると、世帯収入の5〜7%以内が保険料の目安とされています。
フリーランスの場合、事業経費や税金負担もあるため、4〜6%程度に抑えるのが無理のない水準です。
保険の重複に注意
- 医療保険や共済、クレジットカード付帯保険などで同じ保障が重複していないか確認
- 複数の保険会社で似た内容を契約している場合、見直すことで保険料を削減できる
教育費と保障のバランスの取り方
教育資金は「積立+保険」で準備
教育資金は貯蓄だけでなく、保険を活用してリスクを分散できます。
| 手段 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 貯蓄(定期預金・つみたてNISAなど) | 安全性が高く、いつでも引き出せる | 万一のときは不足する可能性 |
| 学資保険 | 強制的な積立、死亡時の免除特約あり | インフレに弱い、途中解約で元本割れ |
| 生命保険(死亡保障付き) | 万一の際に教育費を一括確保できる | 保険料負担が継続する |
「収入保障保険+投資信託」のハイブリッド型
最近の子育て世代フリーランスでは、収入保障保険で最低限の生活費を確保し、教育費は投資信託で積み立てる方法が増えています。
- 保険で万一時のリスクをカバー
- 積立は長期運用で増やす
- 保険期間終了後は積立金を老後資金にも転用可能
保険を事業経費にできるケース
フリーランスでも、契約内容によっては保険料の一部を事業経費として計上できます。
ただし、生命保険料は原則として経費にならず、個人の生命保険料控除が対象です。
一方で、業務上必要な損害保険や賠償責任保険などは経費計上が可能です。
| 保険種類 | 経費計上の可否 | 備考 |
|---|---|---|
| 生命保険(個人契約) | × | 所得控除対象(生命保険料控除) |
| 医療保険(個人契約) | × | 所得控除対象 |
| 業務災害補償保険 | ○ | 事業に関連する事故やケガを補償 |
| 賠償責任保険 | ○ | 顧客への損害賠償に備える |
家族構成別の保険設計モデル
例1:子ども1人(5歳)、世帯年収500万円の場合
- 目的:大学卒業までの教育費と万一の生活費確保
- 想定教育費:1,000万円(大学進学時までの総額)
- 必要保障額:教育費1,000万円+生活費年間200万円×17年=4,400万円
設計例
| 保険種類 | 保険期間 | 保険金額 | 保険料/月 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 収入保障保険 | 65歳まで | 月15万円 | 約6,000円 | 万一時に毎月給付 |
| 医療保険 | 終身 | 日額5,000円 | 約3,000円 | 入院・手術に備える |
| がん保険 | 終身 | 一時金100万円 | 約2,000円 | 高額治療費リスク対応 |
→ 合計保険料:約11,000円/月(年収の2.6%)
例2:子ども2人(3歳・7歳)、世帯年収700万円の場合
- 目的:2人分の教育費+生活費確保
- 想定教育費:2,000万円(2人合計)
- 必要保障額:教育費2,000万円+生活費年間300万円×15年=6,500万円
設計例
| 保険種類 | 保険期間 | 保険金額 | 保険料/月 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 収入保障保険 | 65歳まで | 月20万円 | 約8,000円 | 万一時に毎月給付 |
| 医療保険 | 終身 | 日額5,000円 | 約3,000円 | 入院・手術に備える |
| 就業不能保険 | 60歳まで | 月10万円 | 約4,000円 | 病気・ケガで働けない場合の補填 |
| がん保険 | 終身 | 一時金150万円 | 約3,000円 | 高額治療費対応 |
→ 合計保険料:約18,000円/月(年収の3.1%)
保険設計シミュレーションのポイント
- 万一の保障期間は「子ども独立」+α
→ 大学卒業後、親の生活費分は減るため、保険期間を短めにすることで保険料を抑える - 就業不能リスクを忘れない
→ 死亡保障だけでなく、働けなくなるリスクに備える保険も重要 - 貯蓄と投資を並行する
→ 保険で必要最低限をカバーし、教育費の不足分はつみたてNISAや定期預金で補う - 控除制度を活用
→ 生命保険料控除や地震保険料控除などを利用して税負担を軽減
保険見直しのタイミング
| タイミング | 見直し理由 |
|---|---|
| 子どもの進学時 | 教育費の必要額が変化 |
| 住宅ローン完済時 | 債務保証の必要が減少 |
| 配偶者の収入変化 | 保障額の増減が必要 |
| 家計状況の変化 | 保険料負担の最適化 |
保険選びから契約までの実行ステップ
1. 家計と教育費の現状を把握する
- 年間の生活費・教育費・住宅費を整理
- 現在の貯蓄額と将来の収入見込みを確認
2. 必要保障額を計算する
- 「必要保障額 = 教育費+生活費+債務残高 − 現在の金融資産」
- 計算ツールやFP相談を活用すると正確に見積もれる
3. 優先順位をつける
- 死亡保障、就業不能保障、医療保障、がん保障などを必要度順に並べる
- 全部を一度に加入せず、重要度の高い保障から確保
4. 商品を比較する
- 保険料、保障内容、保険期間、特約の有無を比較表にまとめる
- ネット生保や共済はコストが低く、掛け捨て保険に向く
5. 契約とアフターフォロー
- 加入後もライフイベントごとに見直し
- 不要になった特約は解約し保険料を圧縮
保険設計と教育費準備の最終提案
- 保険は「リスク移転の道具」であり、すべてを保険で備える必要はない
- 教育費は「長期積立と投資」を基本に、保険で不足分を補う
- 就業不能・死亡・医療の3大リスクをバランスよくカバー
- 保険料は手取り年収の3〜5%以内に抑える
- 控除制度を活用して実質負担を軽減
チェックリスト:子育て中フリーランスの保険設計
- 家計と教育費を数値化した
- 必要保障額を計算した
- 優先順位を決めた
- 保険商品を比較検討した
- 加入後の見直し計画を立てた
まとめ
子育て中のフリーランスは、会社員のような福利厚生がないため、保険でのリスクヘッジが重要です。特に教育費と生活費の確保は、万一の際に家族の生活を守る基盤となります。保険は入れば安心ではなく、必要な保障を、必要な期間だけ、適正な保険料で持つことが大切です。定期的な見直しと、貯蓄・投資との併用で、無駄のない保険設計を実現しましょう。










