フリーランスが抱えるリスクと保険の重要性
フリーランスとして働く人にとって、安定した給与や社会保険による保障がないことは大きな特徴です。会社員であれば、病気やケガで働けなくなった場合でも「傷病手当金」や「労災保険」が収入をある程度補ってくれます。しかし、フリーランスの場合はそうした公的制度が限られており、万が一のときに生活資金をどう確保するかは自ら備える必要があります。
特に保険は、突発的なリスクに備えるための大切なツールです。ただし「いくらの保障額が必要か」は年齢やライフステージによって大きく変わります。20代の独身フリーランスと、40代で家族を養っているフリーランスでは、必要とされる保障の内容も金額も異なるのです。
本記事では、年齢別に必要な保障額を整理しながら、フリーランスが考えるべき保険の選び方についてわかりやすく解説します。
なぜ年齢によって必要保障額が変わるのか
必要な保障額は「生活費」「家族構成」「将来の支出予定」によって決まります。具体的に影響を与える要素は次のとおりです。
- 独身か既婚か
→ 扶養家族がいない場合は死亡保障の必要性が小さい。
→ 配偶者や子どもがいる場合は生活費や教育費をカバーする必要がある。 - 子どもの有無と年齢
→ 子どもが小さいほど教育費が長期間必要となり、保障額も大きくなる。 - 住宅ローンの有無
→ ローンが残っている場合、返済負担をカバーするための保障が重要。 - 年齢に応じた病気リスク
→ 若いうちは死亡よりも「働けなくなるリスク」が中心。
→ 年齢が上がると医療費や介護費の備えが重要になる。
このように、年齢やライフステージに応じて「保障の種類」と「金額」を見直すことが不可欠なのです。
フリーランスに求められる保障の基本的な考え方
フリーランスが検討すべき主な保険は以下のとおりです。
- 医療保険
入院や手術の費用をカバー。高額療養費制度はあるが、収入減少の補填はできないため重要。 - 所得補償保険(就業不能保険)
病気やケガで働けなくなった場合の収入を補う。フリーランスには必須といえる。 - 生命保険(死亡保障)
家族の生活費や教育費を残すための保障。独身の場合は必要性が低い。 - がん保険・三大疾病保険
長期治療が必要な場合の費用をカバー。年代が上がるほど重要性が増す。 - 老後資金形成型の保険(個人年金保険など)
将来の生活資金を積み立てる目的。40代以降で意識すべき。
これらを年齢ごとにどのように組み合わせ、いくらの保障額を確保すべきかを次章から具体的に見ていきます。
年齢別に見る必要保障額の全体像
まずは年齢別の必要保障額を概観してみましょう。
| 年齢層 | 主なリスク | 必要保障額の目安 | 重視すべき保険 |
|---|---|---|---|
| 20代フリーランス | 働けなくなるリスク | 生活費6〜12か月分(約150〜300万円) | 医療保険・所得補償保険 |
| 30代フリーランス | 家族扶養・住宅ローン | 年収の3〜5年分(約1,000〜2,000万円) | 生命保険・所得補償保険 |
| 40代フリーランス | 教育費ピーク・健康リスク上昇 | 教育費+生活費合計(約2,000〜3,000万円) | 生命保険・医療保険 |
| 50代フリーランス | 老後準備・病気リスク | 医療費・介護費+老後資金(約1,500〜2,500万円) | 医療保険・個人年金 |
| 60代以上フリーランス | 老後生活・介護 | 生活費+介護費(約1,000〜2,000万円) | 介護保険・個人年金 |
※金額は一般的な目安であり、家族構成や生活水準によって変動します。
20代フリーランスに必要な保障
独身で働き盛りのリスク
20代のフリーランスはまだ独身であることが多く、死亡保障の必要性は低いのが一般的です。しかし、「病気やケガで長期間働けなくなるリスク」は大きな問題となります。なぜなら、生活費の多くは自分の労働収入でまかなっているため、収入が止まるとすぐに生活基盤が揺らぐからです。
必要保障額の目安
- 生活費の6〜12か月分
→ 月の生活費が25万円の場合、150万〜300万円程度を確保するのが理想。
重視すべき保険
- 所得補償保険:月額10万〜20万円を1〜2年間受け取れるタイプを選ぶと安心。
- 医療保険:入院1日あたり5,000〜1万円の保障があれば十分。
30代フリーランスに必要な保障額とポイント
30代は仕事も家庭も本格化する時期
30代になると、フリーランスとしての収入基盤がある程度安定し始める一方で、結婚や出産、住宅購入といったライフイベントが重なりやすい時期です。独身の場合は生活費や最低限の医療保障が中心ですが、配偶者や子どもがいる場合は、もしもの際に家族が生活できるだけの保障を確保することが重要になります。
必要保障額の目安
- 独身の場合:生活費6か月~1年分(約200万〜400万円)+医療費用
- 既婚・子育て世帯の場合:生活費3〜5年分(約1000万〜2000万円)+住宅ローン残債+教育費
保険の組み合わせ例
- 医療保険:入院・手術に備えた日額5,000円〜1万円程度
- 死亡保障:定期保険で1,000万〜2,000万円
- 就業不能保険:月収の7割を補償できる金額
40代フリーランスに必要な保障額とポイント
40代は教育費と住宅ローンが重なる
40代は子どもの教育費がピークに差し掛かり、住宅ローンの返済も続くため、保障の重要性がさらに高まります。一方で貯蓄も増えてくるため、全てを保険で賄う必要はなく、「保険+資産運用」 のバランスを考えることが大切です。
必要保障額の目安
- 独身の場合:生活費1〜2年分(約400万〜800万円)
- 子育て世帯の場合:教育費+住宅ローン残債+生活費5年分(約2000万〜4000万円)
保険の組み合わせ例
- 医療保険:保障額は維持、先進医療特約やがん保険を追加
- 死亡保障:定期保険で2,000万〜3,000万円
- 就業不能保険:年収の60〜70%を補償
- 個人年金保険やiDeCo:老後資金の準備をスタート
50代フリーランスに必要な保障額とポイント
50代はリスクの種類が変わる
50代になると、子どもの教育費が終盤に近づき、住宅ローンの返済も見えてきます。一方で、健康リスクが高まり、医療や介護の備えが欠かせません。死亡保障は減額してもよい時期ですが、老後資金や医療保障を手厚くする必要があります。
必要保障額の目安
- 独身の場合:生活費2〜3年分(約600万〜1000万円)+医療・介護費用
- 子育て終了世帯:生活費1〜2年分+老後資金準備(約1000万〜2000万円)
保険の組み合わせ例
- 医療保険:保障額を厚くし、がん・生活習慣病特約を重視
- 死亡保障:1,000万円程度まで縮小
- 介護保険:将来の要介護リスクに備える
- 老後資金:iDeCo・NISA・個人年金の積立を強化
60代以降フリーランスに必要な保障額とポイント
60代以降は「資産で備える」フェーズ
60代になると死亡保障はほとんど必要なくなり、生活費と医療費・介護費の備え が中心となります。これまでに積み立てた資産をどう取り崩すかが重要で、保険は最低限の医療・介護リスクに対応する形に絞られていきます。
必要保障額の目安
- 独身の場合:生活費2〜3年分+介護資金(約1000万〜2000万円)
- 夫婦世帯の場合:夫婦の老後生活費+医療・介護費(約3000万〜5000万円)
保険の組み合わせ例
- 医療保険:入院・手術保障を継続
- 介護保険:要介護状態に備える
- 死亡保障:基本的に不要(葬儀費用程度)
- 資産活用:退職金・年金・貯蓄を中心に生活
30代・40代フリーランスの保険選びのポイント
働き盛り世代に必要な保障とは
30代から40代は、フリーランスとしての仕事量も増え、家庭を持つ方も多い年代です。住宅ローンや教育資金の負担が大きくなるため、必要保障額は一気に増加します。この時期の保障不足は、家族の生活に直結するリスクとなるため注意が必要です。
主な保障の目安
- 死亡保障:年収の5~10年分(目安3,000万~5,000万円程度)
- 医療保障:1入院につき50万円程度+先進医療特約
- 所得補償保険:毎月の生活費+住宅ローン返済額をカバー(20万~30万円/月)
特に所得補償は、病気やケガで働けなくなった際の生活防衛策として不可欠です。会社員のような傷病手当金がないフリーランスにとっては、実質的なセーフティネットの役割を果たします。
50代フリーランスの保障見直し
教育資金と老後資金の両立が課題
50代は子どもの大学進学や住宅ローンの残債がある一方で、老後資金の準備を本格的に始める時期でもあります。そのため、必要保障額はやや減少するものの、ライフイベントに備えた柔軟な設計が求められます。
保険設計のポイント
- 死亡保障は徐々に縮小(2,000万~3,000万円程度)
- 医療・介護保障を強化(先進医療、三大疾病保障など)
- 個人年金保険やiDeCoを活用した老後資金形成
50代以降は、保障額を無理に増やすよりも「万一の時に最低限必要な金額」と「老後に向けた資産形成」のバランスを意識することが大切です。
60代以降フリーランスの保障の考え方
リタイアを見据えた保険戦略
60代になると、子どもの独立や住宅ローン完済が進み、必要保障額はさらに減少します。その一方で、医療費や介護費用への備えが現実的な課題となります。
この時期に重視すべき保障
- 医療保険:長期入院や先進医療に備える
- 介護保険:要介護状態になった場合の費用負担を軽減
- 死亡保障:葬儀費用+配偶者の生活費(500万~1,000万円程度)
死亡保障は大幅に減らしても問題ありませんが、医療・介護分野の保障は年齢とともにリスクが高まるため、可能な範囲で確保しておくことが望ましいです。
年齢別必要保障額のまとめ(一覧表)
| 年代 | 死亡保障額の目安 | 医療保障の目安 | 所得補償の目安 | 保険選びのポイント |
|---|---|---|---|---|
| 20代 | 500万~1,000万円 | 入院5,000円/日 | 15万~20万円/月 | 独身中心。最低限の医療+所得補償で十分 |
| 30代 | 3,000万~5,000万円 | 入院1万円/日 | 20万~30万円/月 | 家族持ち増。死亡+所得補償を重視 |
| 40代 | 3,000万~4,000万円 | 入院1万円/日+先進医療 | 20万~30万円/月 | 教育資金負担期。保障は厚めに確保 |
| 50代 | 2,000万~3,000万円 | 三大疾病+介護備え | 15万~20万円/月 | 老後資金準備と保障のバランス重視 |
| 60代以降 | 500万~1,000万円 | 医療・介護特化 | 必要に応じて | 葬儀費用+生活費最低限。資産活用も検討 |
フリーランスが保険を選ぶときの実践的アクション
ステップ1:ライフプランを見える化する
- 住宅ローンの有無
- 子どもの進学や教育資金
- 老後資金の準備状況
これらを整理することで、自分にとって必要な保障額が具体的になります。
ステップ2:保障と資産形成を分けて考える
「保障は万一の備え」「資産形成は長期的な運用」と切り分けることで、過剰な保険料負担を防げます。
ステップ3:定期的に見直す
- 年齢が上がるにつれて保障ニーズは変化
- 3~5年ごとに保障額をチェック
- 家族構成や収入変化に合わせて調整
まとめ:年齢に応じた最適な保障設計が安心につながる
フリーランスは会社員と異なり、社会保障制度の手厚さが限られています。そのため、年齢やライフステージごとに必要な保障額を把握し、計画的に保険を組み合わせることが不可欠です。
20代では最低限の保障、30代・40代では厚めの保障、50代以降は老後資金と医療介護にシフトする――こうした流れを意識して、定期的な見直しを行うことで無駄のない保険設計が実現します。

