はじめに
「利益が出ているのに、手元にお金が残らない…」
「決算が近づくと慌てて節税策を探してしまう…」
そんな悩みを持つ中小企業経営者の方は少なくありません。
しかし節税は、決算直前に慌ててやるものではなく、日々の経営活動の中で“戦略的に”取り組むべき重要課題です。
本記事では、税理士の視点から「中小企業が知っておくべき節税の基本7選」をわかりやすく解説します。
2025年の最新動向も踏まえ、今すぐ実行できる節税対策を整理してお伝えします。
なぜ中小企業こそ節税が重要なのか
- 法人税や消費税、事業税、住民税…中小企業は多くの税金を負担
- 黒字でも現金が減るのは、税金と社会保険料のインパクトが大きいため
- 節税を怠ると、利益が税金で消える構造に陥る
つまり、中小企業が成長するには、利益を守る=税負担をコントロールする力が不可欠なのです。
節税の基本7選
1. 必要経費の計上漏れを防ぐ
最も基本かつ効果的な節税は、本来経費にできる支出をもれなく計上することです。
■ 見落とされがちな経費例
- 携帯電話やWi-Fiなどの通信費(業務利用分)
- 会議費としてのカフェ代・昼食代
- 自宅兼事務所の家賃や水道光熱費の按分
- Amazonや楽天での消耗品購入
税務調査で問題にならないためにも、領収書・支出のメモを必ず残す習慣をつけましょう。
2. 役員報酬の設定を見直す
中小企業の場合、役員報酬は会社の損金になりますが、「増額」や「期中変更」は原則認められません(定期同額給与の原則)。
■ 節税に強い役員報酬の設計例
- 法人利益を圧縮しつつ、役員側の税率も抑えるバランス設計
- 社会保険料と所得税の境界を考慮
- 退職金との兼ね合いを見越した長期設計
報酬を適正に設計することで、法人・個人のトータル税額を抑えることが可能になります。
3. 小規模企業共済・倒産防止共済を活用する
独立行政法人中小機構が提供する2つの共済制度は、全額が損金または必要経費として処理できる節税ツールです。
■ 小規模企業共済
- 個人事業主・中小企業役員の退職金準備制度
- 掛金は月1,000円〜7万円まで自由設定
- 掛金全額が所得控除に
■ 倒産防止共済(経営セーフティ共済)
- 取引先倒産時に無担保で資金を借りられる制度
- 月額5,000円〜20万円の掛金が全額損金算入可能
- 解約時は戻り金を益金計上するが繰延効果大
4. 少額減価償却資産の特例活用
30万円未満の資産は、取得した年に一括で経費計上できる特例があります(中小企業限定、青色申告が条件)。
■ ポイント
- 通信機器、PC、什器備品、ソフトウェアなど対象
- 年間300万円までの限度額に注意
小さな投資でも早期に損金化できるメリットがあるため、期末対策として非常に有効です。
5. 決算賞与の損金算入
期末に「未払賞与」として役員・従業員に支給予定を立てていれば、実際の支給が翌期でも当期の損金にできます(一定の要件あり)。
■ 要件
- 決算確定前に賞与額を明確に決定
- 社内の承認記録がある
- 決算日から1か月以内に支給されること
計画的に行えば、決算前に大きな節税効果を発揮します。
6. 旅費規程を作成し「非課税手当」で支給
正しく整備された旅費規程を用いることで、交通費・日当などを「非課税」で従業員や役員に支給可能です。
■ 節税の構造
- 会社→損金
- 個人→非課税
特に「日当制度」をうまく活用すれば、役員報酬の実質増額と法人税削減を同時に達成できます。
7. 中小企業経営強化税制の活用
即時償却や税額控除が受けられる**「中小企業経営強化税制」**を使うことで、設備投資時の税負担を大幅に軽減できます。
■ 対象例
- 生産性向上に資する設備(ソフトウェア含む)
- 専門家の確認書が必要
- 最大で取得費の100%即時償却または10%税額控除
設備更新の予定がある場合は、制度の適用可否を事前に必ず確認しましょう。
よくある質問と注意点
Q1. 節税=経費を増やすこと?
→いいえ、「無駄な支出」は節税ではなく浪費です。戦略的な支出が真の節税です。
Q2. 赤字でも共済は有効?
→小規模企業共済は所得控除なので、赤字では意味がありません。倒産防止共済は損金処理可なので、赤字でも資金運用としては有効です。
Q3. 税理士に相談すべき?
→はい。保険や規程・役員報酬の調整など、制度理解と会計処理が必要な分野は税理士の助言が不可欠です。
まとめ
中小企業にとって、節税は単なる「税金を減らすテクニック」ではなく、経営戦略の一部です。
利益を守り、未来の投資につなげるために、今回紹介した7つの基本をまずは実践しましょう。
✅ 支出の見直し
✅ 制度の正しい理解
✅ 事前の準備と相談
これが、節税の成功と経営の安定を同時に実現する第一歩です。