フリーランスが保険に入るべき理由は「事業と生活の両面を守るため」
フリーランスや個人事業主は、会社員と違って労災保険や企業の福利厚生が自動的に適用されるわけではありません。
そのため、病気やケガで働けなくなった場合や、業務中のトラブルで損害賠償を負う事態に備えるには、自分で適切な保険に加入しておく必要があります。
しかし、保険は種類が多く、補償内容や保険料も幅広いため、何を選べばよいのか迷う人が多いのも事実です。
そこで本記事では、実際にプロとして活動しているフリーランスが加入している保険5選を紹介し、その必要性や選び方も解説します。
フリーランスが直面する5つの主なリスク
1. 働けなくなるリスク
フリーランスは労災や傷病手当金が原則使えないため、病気やケガによる長期休業はそのまま収入ゼロにつながります。
2. 高額医療費のリスク
国民健康保険には高額療養費制度がありますが、先進医療や差額ベッド代などは自己負担になります。
3. 損害賠償リスク
納品物の不具合や作業中の事故など、業務中に第三者へ損害を与えた場合は、高額な賠償金を請求されることがあります。
4. 老後資金不足リスク
国民年金だけでは将来の生活費が不足しやすく、長期的な備えが必要です。
5. 家族への生活保障リスク
自分が死亡・高度障害になった場合、家族の生活を守る仕組みがなければ、残された家族が困窮する可能性があります。
保険を選ぶ際の難しさ
- 補償内容や免責条件が複雑で、比較がしにくい
- 広告やランキングサイトが自分に最適とは限らない
- 保険料負担と補償額のバランスを見極める必要がある
- 公的制度との重複や不足を把握する必要がある
このように、保険選びは時間と情報収集が必要な作業です。
そのため、実際に現場で活動しているフリーランスが選んでいる保険を参考にすることは、効率的かつ実用的な方法といえます。
プロのフリーランスが選ぶ保険5選の概要
実際にフリーランスとして長年活動している人たちにヒアリングすると、以下の5つの保険は加入率が高い傾向にあります。
これらは業種を問わず、事業と生活の両方を守る上で重要な役割を果たします。
1. 所得補償保険(就業不能保険)
- 目的:病気やケガで働けない期間の生活費や事業経費を補う
- 特徴:免責期間(給付開始までの日数)や給付期間を選択できる
- メリット:固定費や家族の生活費を安定的に確保できる
2. 業務遂行賠償責任保険
- 目的:業務中の事故やミスによる損害賠償責任をカバー
- 特徴:対人・対物・財物損壊などを幅広く補償
- メリット:高額な賠償金リスクから事業を守る
3. 医療保険(先進医療特約付き)
- 目的:入院・手術費用や先進医療費を補償
- 特徴:高額療養費制度でカバーできない費用にも対応
- メリット:突然の医療費負担を軽減できる
4. 生命保険(定期型)
- 目的:万一の際に遺族の生活費や教育費を保障
- 特徴:一定期間のみ保障があり、保険料が割安
- メリット:家族持ちのフリーランスに必須
5. 小規模企業共済
- 目的:事業廃業や引退時の資金を準備
- 特徴:掛金全額が所得控除の対象
- メリット:老後資金と節税効果を同時に得られる
5つの保険に共通するポイント
- 事業継続の安定性を高める
- 所得補償や賠償責任保険は、事業が継続できないリスクに備えるための基盤
- 生活基盤を守る
- 医療保険・生命保険は、突発的な生活費負担や家族の生活維持に直結
- 将来への備えと節税効果
- 小規模企業共済は老後資金を積み立てつつ、現役時代の節税にも貢献
所得補償保険(就業不能保険)の選択理由と事例
選んだ理由
- フリーランスは会社員のような傷病手当金がないため、休業時の収入がゼロになる
- 病気やケガは予測不能で、長期休業になると生活費・事業経費の支払いが困難になる
- 掛け捨て型であれば保険料が比較的安く、必要な期間だけ保障を設定できる
実際の事例
デザイナーのAさんは、急性疾患で2か月間入院。
免責期間30日のプランに加入しており、入院2か月目から月額20万円の補償を受けられたため、家賃や光熱費、外注費を滞りなく支払えた。
業務遂行賠償責任保険の選択理由と事例
選んだ理由
- クライアントや第三者に損害を与えた場合の賠償額が高額化している
- 特に現場作業や制作物の納品を伴う仕事は、損害賠償請求のリスクが高い
- 弁護士費用特約が付いている商品もあり、トラブル時の法的対応もカバー可能
実際の事例
カメラマンのBさんは、撮影現場で誤って高価な機材を破損。
修理費用約80万円は保険から全額補償され、自己負担ゼロで解決できた。
医療保険(先進医療特約付き)の選択理由と事例
選んだ理由
- 高額療養費制度で自己負担上限はあるが、先進医療や差額ベッド代は対象外
- フリーランスは入院中の収入減少も重なり、医療費負担は大きな打撃になる
- 先進医療特約をつけることで、数百万円単位の費用も補償可能
実際の事例
ライターのCさんはがん治療で先進医療を受け、治療費は約300万円。
特約で全額カバーされ、生活資金を崩さず治療に専念できた。
生命保険(定期型)の選択理由と事例
選んだ理由
- 遺族の生活費や教育費を短期間集中で保障できる
- 掛け捨て型のため、同額の終身保険より保険料が安い
- 子どもが独立するまでの期間など、必要な期間だけ加入できる
実際の事例
プログラマーのDさんは、子どもが大学を卒業するまでの20年間、死亡時に2,000万円が支払われる保険に加入。
万一のとき、妻と子どもが生活資金を確保できる安心感が得られた。
小規模企業共済の選択理由と事例
選んだ理由
- 掛金全額が所得控除となり、節税効果が高い
- 廃業時や引退時に共済金を受け取れる
- 解約手当金としても利用可能で、事業資金の退職金的な役割を果たす
実際の事例
コンサルタントのEさんは、月額5万円を掛けて10年間積み立て。
廃業時に約700万円を受け取り、生活資金と新しい事業の立ち上げ資金に充てた。
保険加入の実践ステップ
ステップ1:自分のリスクを洗い出す
- 収入減少リスク(病気・ケガ・長期休業)
- 高額医療費リスク(先進医療・差額ベッド代)
- 損害賠償リスク(業務ミス・第三者への損害)
- 老後資金不足リスク(退職金がない)
- 家族の生活保障リスク(死亡・高度障害時)
ステップ2:公的制度と既存保険を確認
- 国民健康保険・高額療養費制度
- 国民年金・遺族年金
- 自動車保険・火災保険・クレジットカード付帯保険
- すでに加入している生命保険や医療保険の内容
ステップ3:不足部分を明確化する
- 所得補償がない
- 業務賠償がカバーされていない
- 老後資金を積み立てていない
- 家族への保障が不十分
ステップ4:複数社で見積もりを比較
- 保険料・補償額・免責期間・給付期間を統一条件で比較
- 特約の有無や適用条件も確認
- 保険会社の信頼性(支払実績やサポート体制)をチェック
ステップ5:定期的に見直す
- 年1回は契約内容を見直し、事業・家族状況の変化に合わせて更新
- 不要な特約は削除、必要な補償は追加
- 新しい保険商品や制度変更にもアンテナを張る
まとめ
プロのフリーランスが実際に加入している保険5選は、
- 所得補償保険(就業不能保険)
- 業務遂行賠償責任保険
- 医療保険(先進医療特約付き)
- 生命保険(定期型)
- 小規模企業共済
これらは事業継続・生活防衛・将来設計の3つを同時に支える保険です。
重要なのは「全員が同じ保険に入るべき」ではなく、自分のリスクと必要保障額に合わせて組み合わせること。
そして加入後も定期的な見直しを行うことで、保険料の無駄を減らしつつ最適な保障を維持できます。










