フリーランスの保険選び、なぜ比較サイトが人気なのか
フリーランスや個人事業主にとって、保険は事業の安定と生活の安心を支える重要なツールです。
万一の病気やケガ、仕事中の損害賠償、長期休業などに備えるため、多くの方がインターネットで保険を探します。
特に「比較サイト」は複数の商品を一度に見られる便利さから、多くのフリーランスが利用しています。
しかし、便利さの裏には落とし穴があります。
実際には、比較サイトをそのまま信じて契約すると、必要な補償が足りなかったり、不要な保険に加入してしまうケースが少なくありません。
なぜ比較サイトの情報が危険なのか
比較サイトはあくまで「情報提供」や「販売促進」を目的としており、必ずしもあなたの状況に合った最適な保険を提示してくれるわけではありません。
フリーランス特有のリスクや、公的制度との関係、業種別の必要補償などは十分に反映されていないことも多いのです。
主な理由は以下の通りです。
- 掲載保険会社が限定されている
契約のある保険会社の商品だけを掲載しており、未契約の会社は表示されません。 - ランキングが広告収入に左右される
掲載順位やおすすめ度が広告料や成約手数料に基づく場合がある。 - 条件の細かいカスタマイズが難しい
フリーランス特有の就業不能補償や業種限定の賠償保険など、ニッチな条件では検索精度が低い。
比較サイトで失敗しやすい保険の選び方
保険料の安さだけで選ぶ
比較サイトでは保険料順の並び替えができることが多く、安い順に選んでしまう傾向があります。
しかし、安い保険は補償範囲が狭かったり、免責期間が長かったりすることがあります。
「人気ランキング1位=最適」と思い込む
人気ランキングはあくまでサイト訪問者や契約件数に基づいた順位であり、あなたの業種や年齢、健康状態に最適とは限りません。
公的制度のカバーを考慮していない
高額療養費制度や傷病手当金など、公的制度でカバーされる部分を差し引かずに民間保険を選ぶと、補償が重複し保険料が無駄になります。
比較サイトだけに頼ることで生じるリスク
| リスク | 内容 |
|---|---|
| 補償不足 | 実際の業務リスクに対応できない補償内容になる |
| 保険料の無駄 | 公的保障や既存保険と重複している |
| 解約時の損失 | 長期型保険を短期間で解約し元本割れ |
| 契約の柔軟性不足 | 業務内容変更に保険が追いつかない |
フリーランスの保険選びは「自分軸」で考えるべき
比較サイトは参考情報として利用できますが、最終的な判断は自分の事業内容・生活環境・将来計画に基づいて行うべきです。
特にフリーランスは雇用されている会社員と異なり、公的保障が少なく、リスクが個別性を帯びています。
そのため、「万人向けに見えるランキング」ではなく、自分専用の保険設計が必要です。
保険選びの正しい手順
1. リスクの棚卸しをする
まず、自分の事業と生活にどのようなリスクがあるかを洗い出します。
- 病気やケガによる休業リスク(所得減少)
- 仕事中の事故や損害賠償リスク
- 家族の生活維持リスク(死亡保障)
- 老後資金不足リスク
2. 公的保障を確認
国民健康保険や国民年金、業務委託契約による労災特別加入など、公的制度でカバーできる部分を確認します。
3. 不足部分だけ民間保険で補う
重複加入を避け、必要な範囲だけを民間保険でカバーします。
たとえば高額療養費制度がある場合は、医療保険は最低限で済むことがあります。
4. 商品を比較する際は複数ルートを活用
- 比較サイトはあくまで「一覧確認用」
- 直接保険会社や代理店に見積もり依頼
- 独立系FP(フィー型)に相談
比較サイトの情報を活かすための注意点
| 注意点 | 解説 |
|---|---|
| 表示順位をうのみにしない | 広告順位や契約件数ベースであり、最適とは限らない |
| 補償内容を細部まで確認 | 免責期間・給付条件・特約の有無をチェック |
| 取り扱い外の保険会社も調べる | 大手以外や業種特化型の保険も検討対象に |
| 将来の見直しコストを考慮 | 解約時の返戻金や課税も事前に把握 |
公的保障と民間保険の役割比較表
| 項目 | 公的保障 | 民間保険 |
|---|---|---|
| 医療費 | 高額療養費制度で自己負担上限あり | 自己負担分や先進医療費用を補償 |
| 所得補償 | 傷病手当金(国保加入者は原則なし) | 休業中の生活費・事業経費をカバー |
| 老後資金 | 国民年金 | 不足分の積立や保障を補う |
| 賠償リスク | 公的制度なし | 業務に伴う損害賠償を補償 |
実際にあった比較サイト経由の保険失敗例
事例1:保険料の安さだけで契約して補償不足に
背景
フリーランスのライターAさんは、比較サイトで最安値の所得補償保険を契約。
しかし契約内容をよく確認せず、免責期間が「90日」もあるプランを選んでしまった。
問題点
ケガで1か月休業したが、免責期間内のため一切給付が出なかった。
結果的に生活費は貯金を切り崩して対応することに。
改善策
- 免責期間は短いほど早く給付が受けられる
- 保険料だけでなく「いつから、いくら、何日間給付されるか」を確認する
- 必要に応じて免責期間30日以内のプランを選ぶ
事例2:公的保障と重複して無駄な保険料に
背景
デザイナーBさんは、比較サイトで医療保険を複数契約。
高額療養費制度の存在を知らず、医療費が公的制度でカバーされた分、民間保険の給付は想定より少なかった。
問題点
年間保険料が20万円以上かかっており、実際に給付を受けたのは数万円程度。
改善策
- 公的保障を先に把握してから不足分だけ民間で補う
- 医療保険は1社に絞るか、先進医療特約のみを活用する
事例3:長期積立型保険を短期で解約して損失
背景
ITエンジニアCさんは、比較サイトで「節税になる」と紹介されていた長期積立型法人保険に加入。
しかし収入が減少し、2年で解約。
問題点
解約返戻金が元本割れし、支払った保険料の半分近くを失った。
さらに解約返戻金に課税がかかり、資金流出が加速。
改善策
- 長期型保険は事業が安定してから加入
- 独立初期は掛け捨て型で柔軟性を確保する
事例4:業種特有のリスクがカバーされていない
背景
カメラマンDさんは、比較サイトで契約した一般的な賠償責任保険に加入。
しかし撮影機材の破損や盗難は補償対象外だった。
問題点
撮影中に機材を壊し、修理費用を全額自己負担。数十万円の出費に。
改善策
- 業種特有のリスク(機材、データ、作品)を事前に洗い出す
- 特化型保険やオプション特約を検討する
失敗例から学ぶ教訓
- 「安い」「人気」だけで選ばない
- 公的制度を前提に不足分を補う
- 契約期間・免責条件を細かく確認
- 業種特化のリスクを考慮する
比較サイトを賢く活用するための行動ステップ
ステップ1:自分の必要保障額と補償範囲を明確化
- 事業と生活の両面で発生しうるリスクを洗い出す
- 家族構成や生活費、事業固定費を基に必要保障額を算出
- 「万一の時に最低限必要な金額」を把握する
ステップ2:公的保障の内容を確認
- 高額療養費制度の自己負担上限
- 傷病手当金や労災特別加入の有無
- 国民年金や遺族年金などの死亡時の給付額
ステップ3:比較サイトは“候補探し”に限定
- 補償内容・保険料・特約などを一次比較
- 複数社を並べて条件差を把握する
- 「候補の絞り込み」に利用する意識を持つ
ステップ4:複数ルートで詳細確認
- 保険会社の公式サイトや代理店で最新条件を確認
- 独立系FP(手数料ではなく相談料を払う形)に意見を求める
- 契約条件書(約款)で免責期間や対象外事項をチェック
ステップ5:契約後も定期的に見直す
- 年1回、事業や生活の変化に合わせて契約内容を再点検
- 不要な保険は解約、必要が増えた場合は特約追加や契約変更
比較サイト依存から抜け出すメリット
- 無駄な保険料を削減できる
公的制度と重複する補償を避けられる - 業種やライフスタイルに合わせた最適な補償が得られる
特化型の保険や特約を見落とさない - 契約条件のミスマッチを防げる
免責期間や給付条件の不一致を回避できる
まとめ
フリーランス保険を比較サイトだけで選ぶことは、多くの場合**「見えないリスク」と「無駄なコスト」**を抱える原因になります。
比較サイトは便利な反面、掲載されていない商品や広告順位の影響があり、あなたに本当に合った保険を保証するものではありません。
失敗を防ぐためには、
- 自分のリスクと必要保障額を把握
- 公的保障を確認
- 比較サイトは候補探しに限定
- 複数ルートで条件確認
- 契約後も定期見直し
この5つのステップを実践することが重要です。
そうすれば、保険料を最小限に抑えつつ、事業と生活をしっかり守る保険設計が可能になります。










