1. はじめに:「節税」とは「合法的に税金を減らすこと」
「節税」と聞くと、難しそうなイメージを持たれる方も多いかもしれません。しかし、**節税とは“法律に則って税金の負担を軽くする工夫”**のこと。脱税や違法行為とは全く異なる、企業や個人が当然に行ってよい“戦略的なお金の使い方”です。
この記事では、初心者でもわかるように、節税の基本的な考え方と、共済・保険・経費の使い分けについて税理士の視点から詳しく解説します。
2. 節税の3大原則:これだけは押さえておこう
節税に取り組むうえでの基本原則は以下の3つです。
- 支出を経費として落とす(損金算入)
- 将来の支出を先に計上する(前倒し)
- 非課税・控除を最大限活用する
これらを正しく理解することで、「節税スキル」が大きく高まります。次項から、それぞれの手段を具体的に解説していきます。
3. 経費を活用した節税:まずはここからスタート!
経費とは「事業に必要な支出」
個人事業主や法人では、事業に直接関連する支出を「経費」として処理することができます。これにより、所得が減少し、結果として税金の負担が軽くなります。
例:経費にできるもの
- 事務所の家賃・光熱費
- 通信費(電話・ネット)
- 交際費(取引先との打合せ等)
- 消耗品・文房具
- 外注費・業務委託費 など
節税のポイント
- 領収書・証拠書類をしっかり保存
- プライベート支出との区別を明確に
- 税務署に説明できるよう理由を整理
**節税の第一歩は、適切に「経費化」すること。**とくに初心者は「何が経費になるか」を明確に把握しておくことが大切です。
4. 保険を使った節税:将来への備えと節税の両立
法人向け節税の代表格:法人保険
法人が加入する「逓増定期保険」や「長期平準定期保険」は、一定割合の保険料を損金算入(経費計上)できる制度があります。
保険で節税する仕組み
- 加入時の保険料を経費として処理
- 解約返戻金を将来の備えに活用
- 役員退職金と組み合わせることで節税効果を最大化
注意点
- 2020年の税制改正で全損タイプの保険は制限
- 節税目的だけの加入はNG
- 解約時に課税されるケースもある
「保険=節税になる」とは限らず、出口戦略が重要。法人保険を利用する際は、税理士や保険代理店と慎重に設計する必要があります。
5. 共済を活用した節税:中小企業・個人事業主の強い味方
小規模企業共済:個人の退職金対策と所得控除
- 個人事業主や法人の役員が加入できる制度
- 掛金は全額が所得控除
- 廃業や退職時に共済金を受け取れる
経営セーフティ共済(倒産防止共済):法人向け節税の定番
- 取引先倒産時の資金繰り支援制度
- 掛金(月20万円まで、年間240万円まで)を損金算入
- 40ヶ月以上加入で100%返戻
共済のメリットと注意点
メリット | 注意点 |
---|---|
節税+資金準備が両立できる | 中途解約時に返戻率が下がる |
倒産・廃業リスクにも対応 | 解約時に課税対象となるケースあり |
6. 節税に役立つ制度・控除もチェック
青色申告特別控除(最大65万円)
- 個人事業主向け
- 複式簿記&e-Tax提出が条件
退職金の優遇税制
- 退職所得控除+1/2課税
- 役員退職金を計画的に支給することで節税効果大
少額減価償却資産の特例
- 取得価額30万円未満の資産は一括経費処理OK(年300万円まで)
7. 【比較表】共済・保険・経費の節税効果まとめ
項目 | 対象 | 節税タイミング | 節税効果 | 注意点 |
---|---|---|---|---|
経費 | 法人・個人 | 即時 | 高い | 私的支出との区別が必要 |
保険 | 主に法人 | 加入時 | 中程度 | 解約時に課税あり |
共済 | 法人・個人 | 掛金支払時 | 高い | 解約時課税の可能性 |
8. 節税のNG例:やってはいけない節税
- 領収書の使い回し
- プライベート支出を経費化
- 実態のない契約(架空外注・保険)
税務署からの調査が入った場合、重加算税や延滞税が発生する恐れがあります。「バレなければOK」は通用しません。
9. 税理士のワンポイントアドバイス
- 節税は「今期だけ」の話ではなく、長期の視点が大事
- 保険や共済は出口(解約・退職)の課税までシミュレーションを
- 節税の選択肢は毎年見直すべき
**「節税したいけど、どれを選べばよいかわからない」**という方は、一度専門家と相談することで最適な対策が見つかります。
10. まとめ:初心者は「経費」「共済」からはじめよう
節税は「難しい」ものではありません。まずは経費処理から始め、将来的には共済や保険も組み合わせることで、より効果的に税負担を軽減できます。
最も大切なのは、**「節税は手段であって目的ではない」**ということ。事業の成長と安定を支えるために、正しく・賢く節税を活用しましょう。